良いニュースと悪いニュースがある。
どっちから聞きたい?
人生で一度は言ってみたい洋画のセリフ。
私はいいニュースから聞きたい派ですね!
最近、COVID-19に対する治療薬のニュースが立て続けに発表され、情報のインプットが追い付いていないところですが、今日はレムデシビルの良いニュースをご紹介致します。
後日ヒドロキシクロロキンの悪いニュースをご紹介しようかと思います。
レムデシビルの概要
レムデシビルは抗ウイルス薬のパイオニアたるギリアドが創製した薬剤です。
もとはエボラ出血熱に対する治療薬として開発されていましたが、今回COVID-19に効果があるのではないかということで、既に臨床試験実施までこぎつけています。
作用機序はRNAポリメラーゼの阻害によるウイルス増殖の抑制であり、広義で見ればアビガンと同じようなタイプです。
詳しくは下記の記事をご参照ください。
論文のご紹介
Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2007016
NEJM(The New England Journal of Medicine)に掲載された上記の論文がレムデシビルに対する良いニュースです。
では、どんなことが書かれているか、見てみましょう!
Figに関しては上記のリンクから原文をご覧ください。
概要
この研究は61名の患者に対して、レムデシビルを10日間投与した際の臨床データの報告になります。
フォローアップはレムデシビルによる治療の開始後少なくとも28日間、または退院または亡くなるまで継続しています。
中央値は18日間です。
盲検はかかっておらず、前向きコホート研究になるかと思います。
このうち53名のデータが解析に足るものでした。
53人のうちわけは、アメリカ22名、ヨーロッパまたはカナダ22名、日本9名です。
この母数で8名も解析できなかったのは若干気になります。
データの要約
ベースラインでは、30人の患者(57%)が人工呼吸を受けていて、4人(8%)がECMO(人工肺)による治療受けていました。
初回投与から18日目(中央値)の結果は下記のとおりです。
・36人の患者(68%)が酸素補充の必要レベルの改善
・30人の患者(57%)が抜管(人工呼吸の必要がなくなった)
・25人の患者(47%)が退院
・7人の患者(13%)が亡くなった
・亡くなった方の割合:侵襲的換気を受けている患者18%(34人中6人)、受けていない患者5%(19人中1人)
安全性に関してですが、非臨床で確認されている腎毒性については認められませんでしたが、肝機能の若干の悪化(AST/ALTの軽度~中等度上昇)が認められたようです。
考察
総じてレムデシビルの効果は良好であったと言えるのではないでしょうか。
今回の報告における全体の亡くなった方の割合は18日間の追跡期間中央値で13%でした。
COVID-19で入院した患者を対象としたカレトラ(ロピナビル/リトナビル)の最近のランダム化比較試験では、28日間における亡くなった方の割合は22%でした。
単純比較はできませんが、カレトラよりも良好な結果であると言えるかもしれません。
注意点としては、レムデシビルで治療された患者の64%はベースラインで侵襲的換気を受けていたという点です。
特にECMOを受けていた方は8%もおります。
このサブグループの亡くなった方の割合は18%あり、非侵襲的酸素サポートを受けた患者の5.3%と比較して高い数字となっています。
また大多数(75%)の患者は60歳以上の男性でした。
このあたりの数字が、結果を悪く見せている可能性があります。
ただしこの研究はコホートの規模が小さく、フォローアップ期間も十分ではありません。
併用薬やその他の条件もばらばらであり、この結果が確たるものであるとは言い切れません。
あくまで良い結果が一つ出たということであり、今後の臨床試験による有効性と安全性の検証が待たれます。
(2020/4/17 追記)
正式な試験結果として公表されているわけではありませんが、海外報道にてギリアド社の実施している臨床試験(125名のCOVID-19患者、うち113例が重症患者)において、良好な結果が得られているとのことです。
そうはいっても、良いニュースには変わりません。
ギリアドは現在重症患者400名、中等度患者600名に対する2本のP3試験の準備を進めています。(追記:現在は4000人規模に拡大しているとのこと)
私はレムデシビルは打倒COVID-19の主役の一人であると思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います!