連日コロナネタばかりで食傷気味かもしれませんが、また新しいネタが出てきましたので、今日もコロナネタを取り上げます。
いや私も食傷気味ですがせっかくここまで取り上げたので、もう少しやっちゃおうかと。
今日取り上げるのは既存の寄生虫治療薬である「イベルメクチン」が新型コロナウイルスに効果があったとの研究報告です。
イベルメクチンの概要や作用機序、研究の内容や今後の展望について考えてみたいと思います。
要約
・イベルメクチンは2002年に承認された寄生虫治療薬
・静岡県の土壌細菌の単離物質をもとに半合成した薬物
・長年使用されており、安全性に問題はない
・今回確認された結果はin vitroであり、治療薬になりえるかはまだ不明
・in vitroで成功してもvivoや臨床試験で失敗するケースは多い
・科研のは外用剤・・・ 飲めません
イベルメクチンとは?
イベルメクチンは日本では2002年に発売された寄生虫治療薬で、結構古いお薬になります。
海外では1993年にフランスで糞線虫症治療薬として承認されています。
開発の経緯/適応
熱帯や亜熱帯地方に広く分布する寄生虫疾患の一つとして、糞線虫症(Strongyloides stercoralisによる感染症)というものがあります。
国内では、沖縄県や鹿児島県に多くみられ、治療薬としてチアベンダゾールというお薬が使用されてきましたが、嘔気、倦怠感等の副作用発現率が高く、重篤な肝障害を起こすことが知られており、新しい薬の開発が望まれてきました。
そこで開発されたのが、このイベルメクチンです!
また疥癬への適応追加申請を行い、2006年8月に適応追加が承認されています。
適応は「腸管糞線虫症と疥癬」の2つ、つまり寄生虫に対する治療薬ということです。
イベルメクチンは、静岡県伊東市川奈の土壌から分離された放線菌Streptomyces avermitilisの発酵産物から単離されたアベルメクチン類から誘導された半合成経口駆虫薬になります。
国産の化合物というわけです!
2015年にノーベル生理学・医学賞症を受賞された大村氏が発見された菌ですね。
あーこのネタはお薬の起源ネタにしていたのですが、こちらに取られてしまいましたね(笑)
商品名は「ストロメクトール」と言います。
ストロメクトールはMSDのお薬ですね。
名前の由来は・・・インタビューフォーム上は特にありませんでした。
作用機序
線虫の神経・筋細胞に存在するグルタミン酸作動性クロライドチャンネルに選択的かつ高い親和性を持って結合することが示唆されています。
また線虫の神経又は筋の細胞膜のクロライドに対する透過性を上昇させ、細胞の過分極を引き起こすことが示唆されています。
つまり寄生虫を麻痺させ駆虫活性を発現するということです。
しかしこの作用機序と今回の新型コロナウイルスに対する作用機序はあまり関連しないかもしれません。
副作用
国内で実施された腸管糞線虫症を対象とした臨床試験において、50例中1例(2.0%)に、悪心、嘔吐が各1件、計2件の副作用が認められています。
海外の自発報告にはなりますが、重大な副作用として、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、肝機能障害、黄疸、血小板減少が認められています。
上記から考えると安全性について懸念する事項はなさそうです。
新型コロナウイルスに対する効果/論文概要
The FDA-approved Drug Ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro
さて、このイベルメクチンが新型コロナウイルスに効果があったという研究報告の内容について見ていきましょう。
この研究はオーストラリアの大学の研究報告になります。
アフリカミドリザルの腎臓由来の細胞を新型コロナウイルスに感染させ(2時間さらす)、イベルメクチンを投与したところ、1回の投与でウイルスの遺伝子増殖の抑制を確認し、48時間以内にウイルスのRNAが99.89%減少したとのことです。
この効果は他のRNAウイルスで示されているように、IMPα/β1を介したウイルスタンパク質の核内移行を阻害することによる可能性が高いと考察されています。
もし薬として先に進むのであれば、感染初期に投与するのがよいのかなと思います。
今後の展望
イベルメクチンはin vitro(非臨床の動物実験前段階)において、他のウイルスにも効果があったとの報告があります。
例えばHIVウイルス、デング熱ウイルス、A型インフルエンザ等です。
しかしこれらは研究段階であり、臨床に進んで承認されたわけではありません。
デング熱については「臨床試験で失敗」しています。
今回の研究報告もin vitroの報告です。
この報告時点で特効薬になりうると考えるのはかなり早計です。
「vitroとvivoでは天と地の差があります」。
もちろん臨床試験ではさらに状況は変わります。
現在臨床に進んでいる薬剤、症例報告が上がっている薬剤と比べると、周回遅れの状態であることは否めません。
ただ「現時点では」というところです。
今後臨床試験が速やかに計画されたり、症例報告で有効例が出てくれば、一気に状況が進展する可能性はあります。
イベルメクチンの思惑で科研製薬が上がっているようですね。
科研のは外用剤だったような?飲むの?
ストロメクトールはMSDのお薬で、販売はマルホが行っています。
マルホは上場していませんが、提携先のコーセーとか?この辺りになるのかな?
私はこーいう波には乗れませんので静観します。
バイオや製薬会社は理性では買えませんね。
アビガンが有望でも富士フイルムの株価が何で上がるのか分かんないもん。
いずれにしても、新薬候補がまた一つ誕生したことは喜ばしいことです。
こちらの研究も応援しています!
0508追記
ユタ大学の1400人を対象とした臨床研究において、イベルメクチンを投与していない患者さんの亡くなった割合は約8%だったのに対し、投与した患者は約1%という良好な結果が出ました。
人工呼吸器が必要な重症者の亡くなった割合をみると、投与していない患者で約21%だったのに対し、投与した患者では約7%でした。
この有効な結果を受けて、北里大で治験が開始されるとのことです。
アビガンやレムデシビルよりは遅れていますが、なかなか期待できるかもしれません。
参考
・コロナ関係のまとめ記事
溢れるCOVID-19治療薬候補、生き残るのはどれだ!【私見】
・サイトマップ
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