高血圧症の治療にお薬以外の選択肢が登場するかもしれないことはご存知ですか?
高血圧症は先日取り上げた脂質異常症と同じ生活習慣病の1種ですね。
健康診断で血圧が高いと指摘され、仕方なく降圧剤を飲まれている方も多いかと思います。
そんな高血圧症の治療に新たな選択肢が生まれるかもしれない、というのが今日のお話です。
要約
・高血圧症は生活習慣病のひとつ。様々な疾患のリスク要因である。
・高血圧治療には莫大な医療費がかかっている。
・CureAppが高血圧治療アプリを開発中。
・患者のデータを分析し、生活習慣を改善を促すアプリである。
・治療アプリは今後有望な市場となる可能性。
・CureAppはすでに禁煙治療用のアプリを申請して承認済み
高血圧症について
疾患概要
高血圧症とは継続して血圧が高い状態が続く病態です。
原因不明の本態性高血圧が90%、原因がはっきりしている二次性高血圧が10%を占めます。
この本態性高血圧は遺伝的要因や生活習慣がリスク要因と考えられるため、高血圧症は生活習慣病の一つになります。
血圧が高いこと自体が、何らかの異常を生み出すわけではありませんが、高血圧状態が長く続くと、血管がいつも張りつめた状態におかれ、だんだん厚く硬くなります。
つまり動脈硬化ですね。
この動脈硬化が、脳出血、脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、心筋梗塞、眼底出血などのクリティカルな疾患の引き金となるので、高血圧はまずいということになります。
治療法と治療コスト
治療方法としては生活習慣の改善や降圧薬を服薬することで、血圧を下げることになります。
高血圧症患者は国内で4300万人程いると考えられ、年間1兆9000億円の医療費がかかっていると推定されています。
治療を行っても改善に至っていない患者さんも多くみられており、多大なコストがかかっている疾患です。
そんな状況もあって、製薬会社にとって狙い目となる疾患でもありました。
今も多くの売り上げが期待できる疾患には変わりありませんが、なかなか画期的新薬の開発は難しいところです。
高血圧症治療アプリの開発
さて、この高血圧症に対して、アプリを用いて治療に介入しようというのが、今回紹介する治療アプリです。
このアプリでは患者さんの血圧や生活習慣のログ等を自動分析したデータから、個々の患者さんに最適化した生活習慣を修正するガイダンスを送信し、患者さんの行動や意識の変容を促すそうです。
これにより患者さんの食生活や運動等の生活習慣を改善し、血圧低下を目指しています。
薬以外のアプローチという面では、先日紹介したゲーミフィケーションに近いものを感じますね。
本アプリは自治医科大学と共同開発されており、信頼性も一定程度あると言えるでしょう。
CureAppについて
このアプリの開発に従事している会社、CureAppは「治療アプリ」という革新的な治療用ソフトウェア機器を開発・診療現場に導入することで、これまでの医療が生み出せなかった新たな治療効用を創出しようとしている会社です。
2014年に創業された比較的新しい会社ですね。
社長の佐竹さんは医師だそうです。ホームページに爽やかな笑顔を載せられております。
キュアアップはニコチン依存症に対する国内初の治療用アプリの治験も実施しておりました。
本治験は既に終了しており、無事に承認されました!(追記参照)
他にもNASH(非アルコール性脂肪肝炎)治療アプリ「NASH App」の多施設臨床試験を2018年から実施しています。
佐竹社長は「世界の治療用アプリ市場が25年には現在の5倍に相当する94億ドルまで拡大する」との見解も述べています。
先手を取って参入できれば、同社の大きな拡大が期待できるかもしれませんね。
上場したらマネゲ化しそうな銘柄です。
(参考:https://cureapp.co.jp/company.html)
まとめ
高血圧症に対する治療用アプリについて見てきました。
薬物療法に頼らずに、病気を改善できることは、患者さんにとっては副作用の低減や生活習慣の改善によるQOLの向上、医療行政にとっては医療費の削減等の利点があると考えられます。
生活習慣を改善することができれば、持続的な効果も期待できますしね!
ただ治療アプリが良好な成績を残したからといって、薬物療法が完全になくなるとは思えません。
生活習慣の改善だけでどうにもならない部分もあるからです。
いずれにせよ、治療アプリの登場は高血圧治療を新たなステージに引き上げることができる可能性がありますね。
今後の続報に期待したいところです!
追記
CureAppの禁煙治療用のアプリは無事に承認されましたね!
上記記事では審査報告書について考察しています。