こないだ年末だったかと思えば、もうすぐ春ですね。
私の株たちは一足早く冬眠から明けてくれたので何よりです。
また冬ごもりしないことを願っています。
春といえば花粉症の季節!
これがあるから春はイヤなの!
なんて方もおられるかもしれません。
今日はそんな花粉症に対するOTC薬(市販薬)の選び方のポイントについて、考えてみようと思います。
「御託はいいので教えて!」という方は「使い分け」をご覧ください。
「私は櫻井くんのがいいの!」という方はクラリチンEXを服用ください。
「私は大野くんのがいいの!」という方はアレグラFXを服用ください。
花粉症の原因
花粉症とは、広くとらえれば「免疫の疾患」です。
ふわふわと飛んできた花粉が鼻の粘膜にくっつくと、免疫に関与する肥満細胞がヒスタミン等のアレルギー物質を放出します。
ヒスタミンは血管や神経に作用して、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状を引き起こすのです。
市販薬の作用機序
では花粉症の薬はどのように働くのでしょうか。
大きく分けると下記の二つがあります。
・抗アレルギー作用:ヒスタミン遊離抑制
・抗ヒスタミン作用:ヒスタミンによる刺激の抑制
「なによ?同じじゃないの!」と思われる方もおられるかもしれませんが、違います。
まぁ作用機序うんぬんはどうでもいいとしても、これらの作用機序の違いが「薬剤選択に重要となる」のです。
市販薬の使い分け
■ポイント1:いつ頃から飲み始めるか(服薬タイミングによる選択)
上で作用機序の違いを説明しましたが、重要なのは作用機序の違いにより服薬するべきタイミングが異なる点です。
・「抗アレルギー作用」を有する薬は、花粉が飛び始めの時期、花粉症の症状が出始めた頃や症状が軽いときに服用すると効果的です。つまり今ぐらいからですね。
・「抗ヒスタミン作用」を有する薬は、花粉症の症状が出てしまって、とっとと抑えたいのだ!というときに使うと効果的です。
・抗アレルギー作用を有する薬の例
抗アレルギー作用「のみ」を有する薬剤は市販の飲み薬ではありません。(たぶん)
医療用医薬品ではではリザベンやインタールですね。
そのため市販薬で抗アレルギー作用を求めるのであれば、後述の第2世代抗ヒスタミン薬が抗アレルギー作用も有するため、そちらを参照頂ければと思います。
■ポイント2:抗ヒスタミン薬は第1世代か第2世代か(症状と効果による選択)
次に症状に着目して薬を選んでみましょう。
抗ヒスタミン薬には第1世代と第2世代があります。
「第2世代のほうが新しいんでしょう?新しい方がいいんじゃない?」と思われるかもしれません。まぁそうなのですが、そうとも限らないこともあります。
「FF7のがFF8よりいいと思う」「モンハンは2ndが至高」って思うこともありますよね?
必ずしも新しければよいというわけでもありません。
どっちを選ぶか決めるためには、抗ヒスタミン薬の開発の歴史を少しつまんでみると分かりやすいです。
抗ヒスタミン薬の初期の頃の薬を第1世代の薬と呼びますが、これらは脳血液関門というバリアを容易に通過するため、眠気などの中枢作用が生じます(ヒスタミンH1をブロックする)。
これらの作用が車の運転等に支障をきたすことから、第2世代の薬は副作用を低減するよう(ヒスタミンH1をブロックしにくい=眠気が少ない)に開発されました。
以前ドラッグリポジショニングの記事でジフェンヒドラミンのことを取り上げたのは覚えておられますか?
あの薬は抗ヒスタミン薬として、アレルギーの治療に使われたお薬でしたが、副作用で眠気が強かったため、逆に睡眠薬としても開発されました。裏を返せばそのぐらい眠気が強かったのです。
そのため通常は眠気の副作用の少ない第2世代を使用するとよいのですが、効果自体は第1世代のほうが強いため、症状がひどいのであれば、第1世代を選択することも一つの手であるのです。なお第1世代の薬は寝る前に飲むと眠気が気になりにくいですね。
・第1世代抗ヒスタミン薬の例:「プレコール持続性鼻炎カプセルL」「パブロン鼻炎速溶錠EX」など
・第2世代抗ヒスタミン薬の例:「クラリチンEX」「アレグラFX」「アレジオン」など
■ポイント3:何回飲むか(利便性による選択)
市販薬の中には1日1回~2回と服薬回数が異なるものもあります。
お薬を飲むのが億劫だったり、頻回だと忘れがちな人は1回のものを選択するのも手かと思います。
1日1回のものの例:「クラリチンEX」「アレジオン」など
1日2回のものの例:「アレグラ®FX」など
おまけ:点鼻薬
飲み薬のことを記載してきましたが、私の経験上、ぜひ伝えておきたいことが点鼻薬についてです。
鼻づまりに効果的な点鼻薬は大きく分けて「血管収縮系」と「ステロイド系」があります。
血管収縮系は鼻の血管を収縮させることで、鼻が通るようになります。即効性がありますので便利です。
商品名としては「パブロン点鼻」等があります。
ステロイド系は炎症を抑えることで鼻詰まりを改善します。しかし効果の発現まで時間がかかります。
ちなみに「ステロイド怖い!」なんてイメージを持たれている方もおられるかもしれませんが、ステロイドは適切に使用すれば非常に有用な薬です。そして、点鼻薬は局所作用(その部分だけに作用)ですので、怖がられているような全身性の副作用はまず起こりえません。
商品名としては「ナザールαAR」等があります。
さて・・・私は薬学部に通い、薬剤師免許を取得したにもかかわらず、添付文書を無視して血管収縮薬のナファゾリン(パブロン点鼻)を「はなしゅっしゅ」の愛称のもと、小学生から常用していました。
いつも何となく鼻が詰まっていて、点鼻をするとすっきりする!の繰り返しでしたが、ある時思い切ってやめました。
するとこの慢性的鼻詰まりがなくなったのです!
この時の慢性的な鼻詰まりは血管収縮薬を継続して点鼻すると、慢性的に腫れた状態となってしまうことが原因です。(薬剤性鼻炎)
※順天堂大学耳鼻咽喉科HP参照のこと
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/jibi/about/disease/target_nose04.html
もしナファゾリン等の血管収縮薬を常用されていて、何だかいつも鼻が詰まっているという方は騙されたと思って、ナファゾリンの点鼻をやめてみてください。はじめの数日は非常にきついです。でも2-3日もすると驚くほど症状が良くなります。
私は小学生から十数年使用してきましたが、今までは何だったのかー!!と叫びたくなるぐらいの衝撃でした。
血管収縮薬というのは適切に使わなければなりませんね。(添付文書にきちんと書いてあります。)
今はナザールαARをたまに使っています。(ARであることが重要です。ただのナザールは血管収縮薬です。名前は似ていますが、中身は根本的に異なります)
ちなみに「ハナノア」なんて衝撃的広告を出したものもありましたね。
お姉さんが真顔で鼻からじょじょーってしてたあれです。
さすが小林製薬。。。
OTC医薬品の売り上げと医療用医薬品の売り上げ
この時期から花粉症の市販薬はよく売れますので、売っている会社はさぞや儲かっているかと考える方もいるかと思われます。
しかし医療用医薬品とOTCを比較すると下記の通り、医療用医薬品が圧倒的な売り上げ比率なのです。
・医療用医薬品:89.4%
・OTC医薬品(市販薬):10.6%
(平成30年薬事工業生産動態統計調査より抜粋
https://www.mhlw.go.jp/topics/yakuji/2018/nenpo/1.html)
ちなみにここ10年は比率としてはだいたい同じくらいの推移ですね。
私個人としてはOTC医薬品の比率が意外と高いな、という印象です。
ですので、花粉症の「なんとか」という市販薬がすごく売れています!からの企業の業績が爆上げ!は、そんなにあることではないと考えてもよいかと思います。もちろんOTCに依存している会社の薬であればあり得なくもないですが。
ちなみにOTCというのは「Over The Counter」の略です。市販薬はレジと「カウンター越し」に手渡ししますからね。
まとめ
さて、花粉症市販薬の選択のポイントについて考えてきました。
上記で挙げたようなポイントを意識して、使用する薬剤を選んでみるとよいと思います。基本的には第2世代の抗ヒスタミン薬を使う感じですね。
あれ?結局、とりあえず嵐の使えばいいんじゃない??(笑)
いずれにせよ、市販薬の選択に迷うようであれば、薬局なり、ドラッグストアなりで薬剤師さんを捕まえて聞いてみましょう!
必ずや喜んで教えてくださるはずです!
雑記
ちょっと薬剤師っぽい記事を書いてみました。
ちなみに普段使わない薬剤師免許は黒い筒に入れて保管してあります。
こないだベッドの下から化石となって発見されました。
年末に書類出さなきゃいけなくて、薬剤師番号が必要だったのですけど、なかなか見つからなくて焦りました(笑)