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オプジーボ、高い薬価の理由と特例市場拡大再算定制度(小野薬品:4528)

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オプジーボはみなさんご存知ですか?

ノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶佑氏が解明した理論をもとに、小野薬品が開発した免疫チェックポイントの阻害薬、新しい作用機序の抗がん剤ですね。

簡単に言えば、「免疫のブレーキを外して、がんに免疫が効くようにする薬」になります。

この薬はこれまでの抗がん剤と全く異なる作用機序を有しており、ノーベル賞受賞によりマスコミが騒ぎ立てたため、夢の薬のように思われていました.

しかしその後、薬価が高すぎるとあちこちから引っぱたかれてしまい、薬価も評判もだいぶ下がってしまいました。今日はこのオプジーボと薬価のことを考えてみたいと思います。

薬価:希少癌から肺がんに適応拡大の弊害

話が明後日の方向に飛びましたが、画期的な新薬オプジーボの高い薬価の問題について記載していきたいと思います。

オプジーボの薬価(100mg)の変遷について下記にまとめましたので見ていきましょう。

  •  初回の薬価収載時:729,829円
  •  特例市場拡大再算定:364,925円なんと半額セール!
  •  (用法用量変化再算定1回目:278,029円 )
  •  (用法用量変化再算定2回目:173,768円 )

はじめに何でこんな高い薬価がついたのか、不思議に思われる方がいると思いますが、ここにはあるからくりがあります

そもそもどのように薬価がつくのか?から記載するべきなのかもしれませんが、それをしていると冗長なお話になってしまいますので、ここでは誤解を恐れず簡潔に1点記載します。

対象患者の少ない疾患を適応とすると薬価が上がる」のです!

別に患者数が少なければ、薬価が高くても医療財政に与える影響は軽微だからです。

さて、オプジーボの初期の適応は「根治切除不能な悪性黒色腫」でした。

 

もう、お分かりですよね?

そうです。この対象疾患は非常に希少で患者数が少ないのです。

(600人ぐらいと言われています。)

だから薬価が非常に高くつきました。

 

ところが、オプジーボはその後、患者数の多い一部の肺がんの適応を取ったのです。

すると、オプジーボを使える患者数が激増し、それに伴い売り上げも急増しました。

そこで行政は気づくわけです。

るな
るな
あっ、これはやばい。お金足りない(>_<)

かといって、薬価は簡単に下げることはできません

見直しの頻度やルールが決まっているのです。

そこで行政は裏技を編み出しました。

なんとオプジーボ用に新しいルールを作ってしまったのです!

なんということでしょうか(笑)後出しじゃんけんはずるいぞ!

それが次に記載した特例市場拡大再算定制度です。

特例市場拡大再算定制度

オプジーボ用に作られた薬価を減額する制度です。

他に基準もありますが、代表的な基準は下記のとおりです。

年間販売額が1,500 億円を超え、基準年間販売額の1.3 倍以上となるもの

オプジーボはこの基準に該当したため(オプジーボを狙い撃ちしたので当たり前ですが)、薬価引き下げの対象となってしまい、半額まで叩き落とされてしまったのでした。

ちなみに後日紹介予定のC型肝炎治療薬のソバルディとハーボニーもこの制度が適応され、約32%も薬価が下げられてしまいました

薬価とHTA(医療技術評価)

特例市場拡大再算定という裏技で薬価を無理やり下げたことは実にフェアではなく、何だか可哀そうだなーと私は考えていますが、そもそもの薬価が、薬の価値と比較して妥当であったのか?という議論も盛んにあります。

この議論の根底に基づく考え方はHTA(医療技術評価)と言われます。詳しくは別の記事で取り上げたいと思います。

上で散々擁護してきたにも関わらずですが、個人的にはやはりオプジーボの薬価は高すぎたと思います。

画期的な新薬ではありますが、費用対効果の面では現在の薬価でもやや割高感はあります。(小野さん、ごめんなさい)

HTAのお話は下記をご参照ください。

【薬価のお話】薬の承認はゴールではなくスタート!HTA(医療技術評価)の基本 医薬品に関連する内容を中心として記事を書いていると、どうしても避けられないのが薬価の問題ですね。 このブログでもオプジーボやゾルゲンス...

薬価算定については下記をご参照ください。

新医薬品の価格はどうやって決まるの?薬価算定制度における3つの道筋 前に医療技術評価(HTA)が薬価に反映されるかも?とか、特例市場拡大再算定制度でオプジーボの薬価が半値にされた!なんてお話をしましたが...

まとめ

オプジーボと薬価の変遷について考えてきました。

薬の承認がゴールではなくて、その後も続きがある点が少しでも伝わったでしょうか。

このような薬剤のライフプランに対する各社の戦略を見ていくことも、製薬企業の業績推移を考えていく際に参考になると思います

小野さんも叩かれすぎてちょっと気の毒ですが、これが武田さんや外資企業だったらこんなにいじめられなかったのではないか、と私は思います。

この辺りのロビー活動については私がさらっと書いていいことではありませんね!

また長くなってしまいまして、すみません。思うところがあるテーマだと、どうしても暑苦しい内容になってしまいますね。

あっ、みなさん一つ断っておきますが、私は熱血系ではなくてさわやか系女子です!

おまけ:売り上げ

そんな苦境に立たされているオプジーボですが、適応拡大を続け、売り上げはかなりあるのです。

2021年度には再び売上高1,000億円越えを目指しているそうです!

小野さんはノーベル賞受賞者の本間先生と裁判沙汰で大変そうですが、頑張ってほしいですね!