エンタイビオ(海外名:エンティビオ)は中等症・重症の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬であり、承認取得済みの静注製剤としてはアメリカやヨーロッパ、日本等、世界60カ国以上で承認を取得しています。
今回、薬剤は同じですが剤型を変えて、より投与が容易な皮下注製剤として、申請していました。
ところが先日、アメリカで承認申請中のエンタイビオ(ベドリズマブ)皮下注製剤について、FDAから「現行データでは承認不可」とする審査完了報告の通知がありました。
承認不可の理由としては「申請データとは関連しない指摘事項」となっておりますので、今回の承認不可は「臨床試験の結果ではなく、それ以外の何らかの要因によるもの」であると推察されます。
ですので、これでおしまいではなく、これから武田薬品とFDAとの間で、疑義事項に対する情報のやりとりがあります。
その結果によっては承認されることも大いにありえます。
なお、今回の皮下注製剤はアメリカ以外にも日本やヨーロッパでも承認申請しているので、アメリカの承認状況が他国の審査に影響を与える可能性も懸念されます。
(各国の審査は独立していますが、他国の承認可否が全く影響しないわけではありません。)
エンタイビオは日本においては2018年の11月から販売されており、武田薬品のラインナップの中でも主力として大活躍しています。
一般名から分かる通り抗体医薬品であり、作用機序は「炎症を起こしている腸管組織の炎症性細胞の一種であるTリンパ球の遊走を阻害することで炎症を抑える」となります。
なお本記事は原則日本での製品名で記載していますが、海外での製品名はエンティビオです。微妙に異なりますね。
穿刺痛の少ない注射製剤
さて今回の皮下注ですが、これは結構面白いものなのです。
武田薬品は2017年にアメリカのポータルインストルメント社と「針を使わない医療用デバイス」の開発・商業化に関する提携契約を締結しています。
このデバイスは、100マイクロメートルという毛の太さぐらいの穴から加圧液体を使用して生物学的製剤を投与するもので、標準的な注射と比べて痛みが少ないとされています。
このデバイスを適用したものが今回申請しているエンタイビオの皮下注と考えられます。私も入院したことありますが、点滴されるのもなかなか痛かったりしますよね。
潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返す疾患のため、治療は長きに続きます。この皮下注製剤が世に出れば、患者さんのQOLも少しは良くなるのではないかと思います。武田さん頑張って!