アルツハイマー型認知症治療薬のアリセプトで有名な中堅製薬会社エーザイのご紹介です。
概要
エーザイといえばアルツハイマー型認知症の治療薬「アリセプト」で有名ですね。
現在も認知症に対する薬剤の開発を積極的に進めており、今後の高齢化社会に向けてもぜひとも応援していきたい会社です。
業績/特徴
現在のグローバル品目の主力は抗がん剤「レンビマ」で、直近の売り上げも大幅に伸長しており、引き続き主力となりうるでしょう。
他にも抗がん剤「ハラヴェン」や抗てんかん薬「フィコンパ」も売り上げに大きく貢献しています。アルツハイマー型認知症治療薬アリセプトも売り上げが落ちたとはいえ、いまだ現役です。
最近の開発状況としては、オレキシン受容体拮抗薬のデエビゴ(レンボレキサント)が承認取得したのが記憶に新しいですね。
これはベルソムラと同じ系統の睡眠改善薬になります。今後売り上げに貢献していくことでしょう。
色々な薬剤の開発を進めていますが、開発品の中でも株価にも多大な影響を及ぼしているものが、抗アミロイドβ抗体「アデュカヌマブ」です。
言わずと知れたアルツハイマー型認知症の治療薬として開発が進められています。
認知症の薬剤の開発は困難を極め、他社を含め、開発が頓挫してしまうケースが非常に多くみられます。そのような難しい状況の中、紆余曲折あれど、アデュカヌマブはついに承認手前までやってきました。
アデュカヌマブの進捗
アデュカヌマブの直近の状況についてまとめてみましょう。
アデュカヌマブは二つの第III相試験「EMERGE試験」「ENGAGE試験」を実施していましたが、独立データモニタリングによる無益性解析で、主要評価項目を達成する可能性は低いとの予測結果が示され、試験中止となってしまいました。
これにより株価も大幅に下がってしまい、認知症治療薬の開発の難しさを世間に知らしめたところでした。
なお、試験失敗の理由としては、無益性試験の結果については「短期間で得たものであり、高用量投与群が非常に少なく、データとして十分ではなかった」と総括されています。
しかし、より大規模な症例数で独自に解析したところ、高用量群で良好な結果(主要評価項目の達成)が得られたとし、突如、開発中止を覆して来年の早い段階で米国や日本で承認申請を目指す決定を行うに至りました。
追記(2020/7/8 FDAに承認申請)
2020/7/8にデュカヌマブについて、バイオジェンによる米国食品医薬品局(FDA)への(BLA:生物製剤ライセンス申請)の提出が完了しています。
申請は、第3相試験であるEMERGE試験およびENGAGE試験、そして臨床第Ⅰb相試験であるPRIME試験の臨床データに基づいています。
もし承認された場合、アデュカヌマブはADの臨床症状の悪化を抑制する初めての治療法となり、かつ脳内アミロイドベータ(Aβ)の除去が臨床結果の改善をもたらすことを実証した初めての治療法となりますね。
第3相試験(EMERGE試験とENGAGE試験)
第3相試験の概要についてまとめておきます。
対象は早期AD患者(軽度認知障害(MCI related to AD)および軽度AD(MMSE:24-30点)です。
1638人の患者さんが組み入れられております。
主要評価項目はClinical Dementia Rating-Sum of Boxes (CDR-SB)であり、
投与78週におけるベースラインからの臨床症状悪化について、プラセボ投与群と比較して、統計学的に有意な抑制を示しています(22%抑制、P=0.01)
またアミロイドプラーク沈着のイメージングでは、投与26週および投与78週でプラセボ投与群と比較して、アミロイドプラーク沈着の減少が確認されました(P<0.001)
その他、記憶、見当識、言語などの認知機能悪化の有意な抑制や、金銭管理、家事(掃除、買い物、洗濯など)や単独での外出などの日常生活動作の悪化抑制が確認されています
一方、ENGAGE試験(1,647人)は、主要評価項目を達成していません。
所感
エーザイの株価は何といってもアルツハイマー型認知症治療薬の試験成功にかかっています。
先日も試験失敗のストップ安からの、やっぱり成功でした!でストップ高と、大きな会社ですが、まるで新興バイオのような過激な動きをするのでとてもスリリングですね。
認知症治療薬は様々な会社がチャレンジして、ほとんどが失敗に終わっています。
やはり疾患の発症機序が明確でないと、薬剤の開発が難しいのだと思います。
アデュカヌマブは根治的な治療薬ではありませんが、ぜひ認知症治療薬の新たな治療の選択肢として、世に出てもらいたいです。
エーザイさんの株価的にも!