「PCR検査を希望者全員に何度でも実施する」なんてことがもてはやされていて、私には全く理解できなかったので、今日は検査方法を整理しつつ、タスクフォースの資料や論文をもとに、PCR検査拡大の是非について考えてみました。
先に申し上げておきますが、PCR検査を拡大すること自体は反対ではありません。
希望者全員に拡大するということ、不要な部分にまで拡大することが理解できかねるというスタンスです。
PCR検査
PCR(ぴーしーあーる)とはPolymerase Chain Reaction(ぽりめれーすちぇいんりあくしょん)の略です。
薬学では授業で学びますし、私は実習で実際にやってみました。
簡単に言うと、遺伝子を増幅させる検査です。
細かいことは省略しますが、DNA断片から1次関数的ではなく、指数関数的(2倍、4倍、8倍!)にDNAを増幅させることができる検査なのです。
感度は70%~90%程度と言われています。
つまり感染者100人検査すれば、70人は感染者を検出できるのです。
いや、70人「しか」検出できないのです。
この「感染しているのに、誤って陰性とされてしまう確率を偽陰性」と言います。
つまりPCR検査における偽陰性は30%ということができます。
逆に「感染していないのに、誤って陽性とされてしまう確率を偽陽性」といます。
これを見抜く力が特異度(特異度が高いと健常者を感染者と誤っていうことが少ない)です。
PCR検査の特異度は99%以上です。
つまりPCR検査においては偽陽性はほとんどないということです。
「陽性と判断されれば、ほぼ確実に感染者ということができる」のです。
この辺ややこしいですが、とっても重要なことです。
「感染してないのに、間違って感染しています!ということはないけど、感染しているのに間違って感染していません!ということが3割もある」のです!!
陰性証明がいかにくだらないことか分かりますね。
費用は2万円程度で、数時間で結果が分かります。
やや利便性に欠けると言えるでしょうか。
鼻の粘膜をぬぐったり、痰や唾液から検査をしますので、検査に際しての感染リスクは高いと言えます。
ウイルスの推移と感染力、感度の推移
ウイルスってどのタイミングが一番多いと思いますか?
実は「発症1-2日前が高く、発症直前がウイルス量のピーク」なのです。
PCR検査について、感度は70%程度と述べましたが、検出力は時期によって変わってきます。
発症した日から日がたつにつれて、検出できる確率は減っていくのです。
感覚的にも分かりますよね?
ウイルスがだんだん減っていくわけですから、当然検出できる力は減っていくわけです。
なお、感染力については発症から7日程は持続すると言われています。
上記踏まえると発症2日前から発症7日後くらいまでは、感染させる可能性があるわけですね。
少なくとも隔離すべきはこの期間というわけです。
発症前の無症状の状態でも感染させる力はあるというわけです。
だから感染を拡大させないためにもマスクが必要というわけですね。
抗原検査
抗原というのは、病原体そのもののことです。
つまりこの検査ではコロナウイルス自体を見る検査になります。
それは分かりやすくていいですね!と思われるかもしれませんが、感度が低いのが問題です。
だいたい50-80%程度しかありません。
これはウイルスそのものを調べるので、ある程度ウイルスが必要であることにも起因します。
つまり無症状の場合は検出できないリスクも上がります。
またPCRと違い偽陽性の可能性も少しあります。
費用は数千円程度で、30分もあれば結果が出るので、簡便ではあります。
鼻の粘膜をぬぐうことで検査をしますので、検査に際しての感染リスクは高いと言えます。
抗体検査
抗体というのは、体が作るウイルスをやっつける物質(超雑)ですね。
つまりこの検査では、体内における戦闘部隊を見るということになります。
かかった直後では戦闘部隊は存在していません。
なので、抗体検査でわかるのは「かかった後の状態」なのです。
要はこの検査でわかるのは「過去の感染」なのです。
感度は高く、90%以上あると言われています。
ただし偽陽性率も高く、感染者でないのに感染者とされる確率があります。
費用は数千円程度で、30分もあれば結果が出るので、簡便ではあります。
血液検査ですので、他の検査と比較して、検査の感染リスクは低いと言えるかもしれません。
なんかよさそうに見えますが、これでは診断には使えません。
だってこの検査でわかるのは「過去の感染」なのです!
過去に感染したからといって、再度感染することもあります。
別にこの検査で陰性だからといって、当然陰性証明などなり得ません。
どこぞの府でこの検査を免罪符のようにしようとしていましたが、まったくもって論外なわけです。
アンジェスと言い、イソジンといい、あそこは大丈夫なのか?
調査の特性を考慮して、疫学調査に用いられることが多いですね。
PCR検査を拡大して希望者全員に実施すればいい?
よくある論調として、希望者全員にPCR検査を実施せよ!というお話があります。
偽陰性が3割もいるのに、検査の時期によっては検査をしても仕方ないのに、希望者全員に実施して、いったい何を求めているのでしょう?
上でも述べていますが、陰性の証明には使えません。
検査に絶対などないのです。
不安の軽減に使うのですか?
それはただのお金の無駄でしょう。
国民の税金がうんぬんいうなら、それを歓迎することは間違っていると思います。
そもそもPCR検査で陰性が出たからと安心するような人には、検査をする前にすることがあります。
大事なのは「PCR検査が必要な人全員に検査をすることができるようにすること」です。
PCR検査が必要な人に、PCR検査を不安だからしたい人は含まれません。
検査が必要な人とは「感染が疑われる人」です。
PCR検査を拡大するということは、半分は正解で半分は誤りだと思います。
「PCR検査を必要とするところに、十分な検査キャパを持たせること」
これが正解であり、不用意に希望者全員にPCR検査をするなどということは無駄の極みだと思います。
1回2万円の検査を毎日延べ10万人にやったら、毎日20億円ですよ!
私は税金から払っていただきたくないですね。
まとめ
今日はCOVID-19の検査方法についてまとめてみました。
PCR検査をできるだけ広げればいいという、単純な思考で動いている政治家も多いですが、そんな単純なお話ではないと思いませんか?
まぁ、考え方は違ってもいいのです。
でも、「PCR検査陰性は感染していないという証明にはならない、しかも結構な確率で外す」。
つまり「陰性証明には使えない」
これだけは忘れないで頂きたいです。
その上で、希望者全員に検査することの意義について、コストや感染リスクも踏まえて考えて頂きたいですね。
余談ですが、
あなたはファイアーエムブレムで70%の命中率を信用しますか?
いや外すでしょ。
そして外すものと思って戦略を立てませんか?
1%のクリティカル率を軽視しますか?
そんなあなたはクラシックモードはやめておくべきです。
ムドやハマの命中率は低いから当たらないと思いますか?
あなたはメガテンを途中で投げるでしょう。
ドロップ率が低いからと諦めますか?
ヴァルマンウェだって100回もキュウを狩れば、
一個ぐらい手に入るのです。もう少し頑張って。
※某黒本の小数点以下の確立うんぬんは例外
なによ、くだらない。と思ったでしょう?
「PCR検査を過信してはいけません。」
「外す確率を軽視してはなりません。」
・・・このPCR検査の根幹となる考え方は、上のくだらない例と大差ないと思います。私は。
と、刺さらない人には全く分からないであろうマニアックな例えとともに、今日のお話を終わりとさせて頂きます!
(FE、メガテン、月下、FFT:いくつ分かりました?)
※当ブログにおける見解は個人的見解であり、所属する企業の見解ではございません。また特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。