結核の予防ワクチンであり、ハンコ注射で有名なBCGですが、新型コロナウイルスに効果的だなんて噂になっています。
今日はそんな謎の噂について考えていきたいと思っています。
Contents
要約
・BCGは弱った結核菌
・日本の赤ちゃんのワクチン接種率は98%以上
・BCGワクチンは膀胱がんにも使用されている
・BCGワクチンは免疫を賦活する可能性
BCGワクチンとは?
BCGはフランス語の(Bacille de Calmette et Guérin)の略であり、カルメット・ゲランという結核菌のことです。
これは研究室で培養を繰り返して、病原性を失った結核菌になります。
つまり「すっごく弱った結核菌」なのです。
すっごく弱った結核菌をヒトに投与することで、結核菌のやっつけ方を学び、結核への免疫を得るというのがBCGワクチンの基本原理です。
雑魚敵倒してレベル上げ!的な感じですね。
ただし経験値はプラチナキング並みです!
みなさんの「二の腕に刻まれているの紋章」
あれがBCG接種の証です。
えっ?消えている?私まだあります。
病院実習の時、ツベルクリンテストもしました。
2017年におけるBCGの定期接種率は98.3%であり、日本のベイビーのほとんどは二の腕に紋章を刻まれたわけです。
膀胱がんにも使用
膀胱がんに対する治療法として膀胱内注入療法というものがあります。
これは尿道から膀胱に挿入したカテーテルを通じて膀胱内に薬を注入するという方法です。
この膀胱内注入療法に使われる薬の一つとして、なんとBCGが使われているのです!
作用機序は不明ですが、論文を読む限りでは膀胱粘膜の脱落などの非特異的な炎症、NK細胞のような非特異的免疫、T細胞系のような細胞免疫が関与しているのではないかと推測されていました。
うーん、要は「免疫を強くする!」ということです(雑)
BCGワクチンと新型コロナウイルス
さてそんなBCGワクチンですが、種々のデータから新型コロナウイルスの予防や重症化を避けるのに有用だとの議論があります。
そんな議論について少し考えてみました。
あくまで私見です。
作用機序
BCGワクチンは結核のワクチンです。
だって弱った結核菌ですからね?
これが新型コロナウイルスという全く別のやつに何で効くのか謎すぎる。
そもそも菌ではなくてウイルスだし。
って思っていたら、どうやら全然違う作用機序らしいです。
BCGワクチンの接種により「免疫状態がエピジェネティックに変化する」とのこと。
はぁ?って感じかもしれませんが、要は「後天的に遺伝的仕組みを変える」みたいなイメージです。
はぁ?って感じかもしれませんが、双子を思い浮かべてください。
遺伝子は一緒ですが、中身まで全部同じじゃないですよね。
細胞まで全部一緒じゃないのです。
遺伝子に化粧がなされ異なる細胞が生み出されているわけです。
だいぶ雑に解説しましたが、ともかくBCGワクチンはエピジェネティックな変化により免疫を変えるらしいです。
この辺りはプロの記事をご覧くださいませ。
参考:【さらに追記しました】新型コロナウイルスとBCG(大隅典子)
70歳以上の致死率が高いのはBCGワクチン接種率が低いから?
さて今回の新型コロナウイルスで亡くなった方は70代以上が圧倒的に多いです。
これは70歳以上はBCGワクチンの定期接種がなかったためではないか!?
という議論があります。
これはちょっと早計かなと私は思います。
高齢者ほど基礎疾患を有している割合が高く、当然体力も落ちていますので、リスクが高いわけです。
つまりBCGワクチンの接種有無以外の交絡因子による影響大きいのではないかと思います。
もちろん結果的にBCGワクチンの接種の有無が原因となっている可能性も当然ありえます。
しかしあくまで疫学調査であり母数も極めて少ないため、特定の1因子の違いだけでBCGワクチンが新型コロナウイルスに有効だと喜ぶのは早すぎます。
個人的には納豆が効くのと同レベルです。
BCGワクチン接種義務化の国の致死率が低い?
例えば接種義務化をやめたスペインの亡くなった患者数が、接種義務化をしているポルトガルと比較して劇的に多いなんて議論をみました。
ただこれも交絡因子(例えば医療体制、罹患した患者の年齢層、罹患した患者の経過日数等)の影響が大きすぎて、この母数では議論が難しいです。
我々にとっては同じヨーロッパの国かもしれませんが、国が違えば異なることもたくさんあります。
数多くの因子のうちの一つの違いだけが結果を形作っているわけではないのです。
BCGワクチンの接種率が高い国でも感染が多いのは株が異なるから?
BCGワクチンは世界中で接種されています。
今回BCGワクチンが新型コロナウイルス予防に効果があると噂になったとき、「だいたいどこでもやってるやん?」と考えていました。
ところが、BCGワクチンには株の違いがあり、新型コロナウイルスに効果がある株と効果のない株があるといった議論がなされていました。
な、なるほど。株の違いですか。
疫学的視点と株の違いが一致するのであれば、推論としては考えられなくもないですね。
なぜなら先ほど挙げた膀胱がんに対する治療において、BCGワクチンの株の違いで効果が異なるという報告があったためです。(現在は日本株のみ使用)
もしこれが事実なら、大変面白いですね。
まとめ
さて今日は最近話題のBCGワクチンについて考えてみました。
いずれも疫学調査をもとにしただけであり、まだ仮説の域を出ていません。
きちんと臨床試験が必要なのです。
そうはいっても、少しでも可能性があるのは素晴らしいことですね!
数ある打倒新型コロナウイルス部隊の一員となれるのか?
今後に注目です!