バイオベンチャーの記事はみなさん結構興味がおありなようで、結構反響がありました。
我々の業界にとっても、投資家界隈にとっても関連するので、読まれる方の層が厚いのかもしれませんね。
前回に引き続き、今日は4つの会社をご紹介しましょう。
やや辛口なものもありますが、あくまで主観ですのであしからず。
オンコセラピー・サイエンス(OTS)
概要
オンコセラピー・サイエンスは、元東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長である中村祐輔教授のがん遺伝子に関わる成果を基に、がん関連遺伝子および遺伝子産物を標的としたがん治療薬、がん治療法の研究開発を目的とする大学発ベンチャーとして2001年に設立されました。
オンコセラピーと言ったら、がんペプチドワクチンが代表的なパイプラインと言えるでしょう。
昔、かるーく紹介した記事がいまだによく読まれますが、塩野義さんと一緒に開発しているS-588410が花形かなと。
S-588410は食道がん第Ⅲ相臨床試験のほか、膀胱がんを対象としたS-588410について日欧で第Ⅱ相臨床試験を完了しており、頭頸部がんを対象としたS-488210は欧州で第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を、また、固形がんを対象としたS-588210は英国で第Ⅰ相臨床試験を、それぞれ実施しています。
ちょっと進捗が遅いのが心配ではあります。
社名の由来
社名の由来は思い当たる方も多いかと思います。
「オンコ」はラテン語で腫瘍(がん)を意味しています。
オンコセラピー・サイエンス(OncoTherapyScience)は、科学的アプローチによるエビデンスに基づいたがん治療の意味を込めて命名されたとのことです。
みんな間違えるからか定かではありませんが、OTSという表記が良く見られますね。
毎年ノーベル賞がどうのこうので上がるので、短期的には取りやすい銘柄ですね。
お手頃価格なので触りやすいですが、その分値動きは激しいので狼狽しないようにしたいですね。
パイプラインに光るものはありますが、主力にするには個人的にはやや劣ります。
でも結構好きな銘柄なので、頑張ってほしいなと思います!
シンバイオ
概要
シンバイオは「トレアキシン」という製品を持っており、黒字化も近いとずっと言われていますが、まだまだまだまだ・・・赤字が続いています。
シンバイオの開発ターゲットは、アンメットメディカルニーズ(医療ニーズが高いにも拘わらず、大手があまり参入して来ない希少疾患がん等)に絞っており、良くいえばブルーオーシャン、悪く言えば大手の捨てた領域でしか勝負ができないということになります。
また、シンバイオの導入する新薬候補は原則として既に有効性・安全性が確立されたもののため、開発リスクを低く抑えているのも特徴らしいです。(ほんとなの?)
以前株式併合して、株価が見かけ上4倍になりました。100円台の時はボロ株としてよく遊んでいましたが、最近はあまり触っていません。というのも製薬業界では禁じ手の割とクリティカルなGCP違反をやらかしたからです。
主力のトレアキシンは 2010 年に悪性リンパ腫の一種である再発・難治性非ホジキンリンパ腫等を対象に承認されたあと、 2016 年には慢性リンパ性白血病や未治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫 を適応対象とする承認を獲得しています。
トレアキシンの臨床試験(適応拡大)は順調に進んでいるものの、売り上げにはまだ貢献しておらず、黒字化はまだ遠いのが現状です。
社名の由来
シンバイオの社名の由来はSymbiosis=共創・共生という企業理念とのこと
患者さんを中心に医師・科学者・行政・開発資金提供者のグループが支え合う関係の中、
シンバイオ製薬の役割はそのオーケストラの指揮者なんですって。
シンバイオは安全性情報でGCP違反やらかした印象が強くて、どうもよい印象が持てません。
オーケストラの指揮者なら、ちゃんとタクト振って!
それに個人的にはトレアキシンには魅力を感じませんし、柱の一つであるリゴセルチブもこないだポキッといきましたからね。
今後どーなるのでしょうか。
個人的には夢の小さいバイオは触る価値がないです。
ここを触るなら他にも面白いところがたくさんあります。
それでも種だけまいておくのも一考か。
カルナバイオサイエンス
概要
カルナバイオサイエンスは、2003年日本オルガノン株式会社から分社かしてできた会社で、キナーゼに特化した創薬支援事業や創薬事業の展開を行っています。
キナーゼ
キナーゼとはにリン(P)を付加する酵素のことです。
リンのOn-Offを通して細胞の信号を制御しているイメージを持って頂ければよいかと思います。
そのキナーゼに特化した会社なのですね。
自社で作成したキナーゼを用いて、阻害活性の高い化合物を絞り込むスクリーニング技術や、リード化合物を最適化するプロファイリング技術で創薬支援事業を展開していますが、キナーゼ阻害薬開発でも注目されています。
炎症性免疫疾患を対象とした BTK 阻害剤「AS-0871」が代表的なパイプラインでしょうか。
2020年夏にオランダで臨床試験入りしたとのことで、話題になりましたね。
まだまだこれからですが、夢はある会社かなと思います。
個人的には主力に据えるにはまだ弱いか。
でもギリアドと組んでたりするしなぁ。
社名の由来
社名の由来はローマ神話に登場する人間の健康を司る女神「カルナ」と生命科学(バイオサイエンス)に因んでいるそうです。
おー!私の好きな神話系ですね。
カルナはまだまだバイオ初心者だった頃に暴騰暴落を目にしました。
アキュセラやサンバイオもそうですけど、あれを他人事と考えてはいけませんよね。
常に自分の推している銘柄にも起こりうるリスクであることを考えておかねばなりません。
もっとも、暴騰している時はすぐに手放すので、あそこまでの多段攻撃を受けることはないとは思いますが。
バイオは肉弾骨折でもいいのですが、肉を切られるのは痛いのです。
GNI
概要
GNIは2001年にアメリカで設立された会社です。
2014年からは自社開発薬「アイスーリュイ」を中国で販売開始していいます。
既に上市済みの製品を持っているのは強みですね。
しかしなんといっても、中国の第2相臨床試験でプラセボに対する統計的に有意な改善結果を示した肝線維症治療薬F351(ヒドロニドン)が最近の話題でしょうか?
あ、いや、最近の話題は第3相をスキップできず暴落したことか。
3相スキップに期待をかけるなど甘いのです。
さて、株価は置いておいて、肝臓の線維化に対する治療薬の意義について、少し触れておきましょう。
肝臓は傷ついても頑張って再生するのですが、あんまり傷つくと瘢痕化して固くなるのです。
雑に言うとかさぶたみたいになるのですよね。
そうすると再生できなくなります。
つまり肝機能が落ちてしまいます。
これが肝臓の線維化です。
肝臓が線維化すると、血液や酸素がいきわたらなくなり、肝臓に血液を送る門脈の圧力が増加します。
そうすると脾臓に行く血液が増えて、アルブミンや血球が破壊されたりします。
アルブミンが減ると血液の浸透圧が下がりますので、その分が体液に向かい、腹水になりますね。
また門脈圧が上がるとバイパスができますので、食道や直腸の静脈瘤にもつながります。
このような関連症状も問題と言えるでしょう。
消化器系はあまり詳しくないのでこのあたりにしておきますが、そんな肝線維化に対して適応を取っているお薬はないのです。
非代償性肝硬変に対するウイルス血症に対しては、エプクルーサが適応を取りましたが、あくまでウイルス血症の適応ですからね。
ロートさんがMSCによる治験をやっていた気がしますが、あれはどうなったのかな?
そんな分野に切り込みを入れるのですから、市場としてはかなり有望でしょう。
私は割と期待しています。
上市されればブロックバスタークラスとなり得る薬です。
しかしこの分野に着目するのは大手も同じこと。
NASH治療薬の開発も盛んです。
肝線維化まで手を広げてくることも十分考えられます。
のんびりしていると先を越されてしまう可能性もあります。
その点は治験失敗のリスクと併せて考えておかねばなりません。
個人的にはバイオ最大のリスクです。
社名の由来
社名の由来は、Gene Network Ink(ジーン・ネットワーク・インク)の頭文字をとってGNIとのこと。
「ジーエヌアイ」よりも、
「ぐに」ってひらがなで書く方が可愛くて好き。
まとめ
バイオベンチャーのご紹介第2弾として、4つの会社をご紹介しました。
どれも魅力的に見えますよね?
どれも夢があって、輝かしい未来があるように見えますよね?
全てが花開くとはゆめゆめ思わないことです。
そこまで医薬品開発は甘くありません。
薬の成功確率が低いことも当然として、
- 上市した薬が受け入れられるのか?
- 費用対効果は?
- 残りの特許期間は?
- 競合薬の上市は?
など、色々な懸念があります。
私個人としては、バイオベンチャーは製薬会社と組むか、早い段階で導出してくれた方が安心です。
単独で売りに出そうというのはやや無謀ととらえます。
短期~中期ならば構いませんが、長期で持つのであれば、その辺りのリスクも勘案するべきだと思います。