今日は治験で起きた嘘みたいな本当の話として、3つのトラブル事例をご紹介してみたいと思います。
治験にトラブルはつきものですが、中には思いもよらないトラブルもあるのです。
この話題は身バレする可能性のあるセンシティブなものですので、若干のフェイクを入れることをお許しください。
また私が直接経験していないものも含まれます。
だから、
患者さんが逮捕された!
ある日、CRCさんから緊迫した内容のお電話がありました。
「逮捕されたんです!どうしましょう!?」
え?誰が?あなたが?
面食らいましたが、落ち着いてもらってからよくよくお話を聞いてみると、
治験に組み入れた患者さんが逮捕されたとのことでした。
さて、騒いでも始まりません。
このケースでまず考えなければならないことは、この患者さんの安全性です。
薬というのは「一度飲んだら、はいおしまい!」というものだけではなく、通常は服用を継続する必要があります。
また急にやめると離脱症状が生じたり、原疾患の悪化を招く恐れもあります。
ましてや治験薬です。
中止した際の安全性に関するデータは不足しています。
そもそもプラセボなのかもしれません。
中止するならするで、色々と安全性を確認する検査が必要になります。
追跡調査も必要です。
治験としてもできれば無駄にしたくはありません。
ここでは深く述べませんがPPS(Per Protocol Set)という概念があります。
要は最低限、治験実施計画書通りに治験を実施した症例ということです。
この症例をPPSに載せられるなら載せたい。
ということで、様々な部署と議論した結果、
この症例については「留置所まで治験薬を届けてもらう」ことになりました!
警察の方もさぞや警戒したのではないでしょうか?
この症例のその後については秘密です。
患者さんと連絡が取れなくなった!
1発目の事例が衝撃的でしたが、この事例はそこそこみられるのかもしれません。
治療期が終わって、後は後観察、追跡期間で終わりだというタイミングで、患者さんと連絡が取れなくなりました。
治験薬も飲み終わっているからいいじゃん!って思われますか?
そんなことはありません。
後観察期間の設定目的も色々ありますが、
有効性の持続や服薬終了後の有害事象の発現等、見るべきポイントはたくさんあるのです。
いや、見なければならないところがあるから、そのようなデザインを取っているのです。
そして治験データは置いておいたとしても、患者さんの安全性が確認できないことは大問題です。
前述のように副作用が発現していたらどうしましょう?
健康被害が起こっていたら、治験どころの騒ぎではありません。
ということで、このような場合は何が何でもコンタクト取れるように対応をします。
もちろんこうならないように日ごろから予防措置を取っていくことが重要なのですが、起こってしまったことは仕方ないので、何とか対応しなければなりません。
- まずはCRCさんがお電話します。
- ダメなら病院の電話から掛けます。
- 先生の携帯から掛けます。
- ご家族に掛けます。
- 緊急連絡先に掛けます。
一度患者さんの彼女さんにかけたらつながったケースがありました。(緊急連絡先)
彼女さんからお話し頂き、事なきを得ました。
男性は女の子からの連絡は無視できないのですね♡
うちの人はLINE既読無視したりしますけどね。
ちゃんと見たら返信してー!
「ちゃんと読んだよー!見たから既読ってついてるんだよー?]
(心底不思議そう)
さて、本題に戻しますが、
もうつながらないなら、ご自宅にお手紙書いたりしてもらいます。
怒らないから出てきて!お願い・・・
追跡期間ならいいですが、治験薬服薬中に連絡がつかなくなったケースでは治験薬を回収する必要があります。
もう会いたくないなら治験薬だけでも返して!お願い。
返送用封筒も入れとくので!
と、ここまですると、どこかで連絡がつくケースが多いです。
それでも連絡がつかない場合は、追跡不能として、治験中止の対応をとることとなります。
治験はいつでも好きな時に辞めることができます。
辞めたい場合は辞めたい!と言えば、それでおけまる!なのです。
同意撤回にならないように色々とフォローはしていきますが、辞めたいならば仕方ありません。
だから辞めるときは連絡がつかず蒸発するのだけは避けてほしいなと思います。
それは治験データのためではなく、治験に参加しているあなたの健康のためなのです。
尿中薬物検査で陽性が出た!
領域によっては治験に組み入れる前に尿中薬物検査を行うケースがあります。
ここでいわゆる刺激的な薬物の使用がないか、それが原因で疾患に罹患しているわけではないかを見るわけです。
ただしこれに引っかかった場合、全てが反社会的なケースかというと、そんなことはありません。
例えば、風邪薬に配合されているコデイン。
鎮咳薬ですね。
咳を静めます。
これが引っかかることがあります。
実はこのコデインは体内でオピオイドになります。
ですので、風邪薬を服薬して来院すると、この検査に引っかかる可能性があるのです。
とある試験でこれに引っかかって落ちた患者さんがいました。
ところがCRCさんが何度聞いても、「風邪薬など飲んでない!」とおっしゃいます。
しかし疾患が疾患なので、風邪薬ではないとすると・・・
場合によっては大ごととなります。
さてどうしようかと焦る中、
先生(怖い)が「俺がもう一度聞いてやる、待ってろ」と。
CRCさん曰く、どこから出しているのか分からないとても優しい声と柔和な雰囲気で
「怒らないから教えて?大丈夫だから・・・」と聞き出してくれたとのこと。
結局、前日に風邪薬を服薬していたことが分かり、事なきをえました。
私はもちろんその場に居合わせたわけではないのですが、
CRCさんの迫真の再現で、その場の状況と雰囲気は呑み込めました。
患者さんも人ですので、言いたくない時もありますよね?
でも教えて頂けないと大変なことになる内容だってあるのです。
できれば正直にお話ししてほしいとことです。
余談ですが治験薬の未服についても、ぜひ正直に教えてください。
怒られるのが嫌だからって捨てられると、非常に困ったことになります。
飲んでないのに飲んだというデータを集めるのは、非常にクリティカルなダメージを与えます。
まとめ
今日は治験で起きた嘘みたいな話を取り上げました。
治験の対象は人ですので、このようなことも起こりうるのですね。
マウスが逮捕されたり、嘘ついたりすることはないですからね。
あ、逃げ出すことはあるのかな?
取り留めのない話題でしたがいかがでしたか?
たまには緩い内容でもと思いましたが、結局固い感じになってしまったような気がしますね。
想像もしないトラブルに見舞われたとき、一番に考えるべきは患者さんの安全性です。
いつどのような場合でも変わりません。
これを外さなければ、大丈夫です。
大きなトラブルには発展しません。(たぶん)
逆にこれを外して治験の継続やデータについてを前面に出しすぎると、とんでもないトラブルに発展する可能性があります。
自分で対応する場合でも、他の方やCROが対応する場合でも、これは変わらないことです。
不測の事態の対応こそ、日ごろの信頼関係が問われるところでもあります。
Dr.やCRCさんとは、常日頃から信頼関係を醸成していきたいですね。
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