医療従事者向けのCOVID-19診療の手引きが更新されたのはご存知ですか?
巷には様々な情報が溢れていますが、正確な情報を知るにはこのような資料を参考にするといいですね。
今日はこの手引きの中から、「COVID-19の症状、合併症、後遺症」について、まとめてみましょう。
それぞれについて、私の所感も記載してみました。
既出の情報ばかりですが、改めて整理してみて、COVID-19という疾患がどのようなものか?見ていきましょう。
COVID-19の症状
概要
初期症状はインフルエンザや感冒(いわゆる風邪)に似ており、発症初期にCOVID-19 を区別することは困難です。
日本における入院を要したCOVID-19 症例のレジストリ(COVIREGI-JP)の2,600 例の解析によると、
入院までの中央値は7 日であり、頻度が高い症状は発熱,咳嗽,倦怠感,呼吸苦であったとのこと。
下痢は約1 割でみられたようです。
また味覚症状(17.1%),嗅覚障害(15.1%)は海外の報告よりも頻度が低いみたい。
COVIREGI-JP のデータでは、入院を要した2,600 例のうち、
・最終的に酸素投与を要しない軽症例が62%
・酸素投与を要した中等症が30%
・人工呼吸管理やECMO による集中治療を要した重症例が9%であり、このうち7.5% が亡くなりました。
入院期間の中央値は15 日でした。
所感
はじめは風邪の親戚みたいなものですね。
だからこそ厄介でもあります。
言うなれば、重症化する可能性のある風邪みたいなものですね。
やはり中心となるのは発熱や呼吸器系の症状ですね。
私が面白いと思ったのが、日本においては味覚症状や嗅覚障害が、海外よりも低いこと。
これは個人的な勘ですが、民族差ではなく、日本人の特質だと思います。
日本人は自覚症状をあまり言わないのです。
治験でもその傾向があります。
日本のお客さんはキレるとクレーム言わずに、二度と来なくなるなんて言われていましたが、あれに近いイメージでしょうか?
もっとも、今はクレームを言うようなお客さんのが多いのかもしれませんけどね。
私は接客業はできないなぁ。
こないだレジで店員さんに怒鳴っている人がいましたが、私だったらかごに入ってた大根で殴りつけてそう。
そんなことしたらいけませんよね。
COVID-19の合併症
概要
呼吸不全:急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は重症患者の主な合併症であり、呼吸困難の発症直後に
現れることがあります。
心血管系:不整脈、急性心障害、ショックなどが報告されています
血栓塞栓症:肺塞栓症や急性期脳卒中などの血栓塞栓性の合併症が約16%に報告され、より高い致命率との関連が指摘されています。
炎症性合併症:重症患者では、サイトカイン放出症候群に類似した、持続的な発熱、炎症マーカーの上昇などを伴う病態を呈することがあるとのこと。
所感
COVID-19によって亡くなる方の多くはARDSによる呼吸不全ですね。
いかにして、ARDSに移行しないようにするかは、予後に関わりそうです。
アクテムラ等の抗体製剤の作用機序のところでも取り上げましたが、ARDSへの移行にはサイトカインストームが関連している可能性が高く、炎症反応も気になるところです。
肺塞栓等の血栓が詰まることが致命率と影響しているのは当然でしょうが、以前研究報告が上がったナファモスタットやカモスタットはウイルス増殖抑制だけでなく、血栓の予防という面でも効果が見込まれていたのかもしれませんね。
COVID-19の後遺症
概要
急性期を過ぎた後に症状が遷延する(後に残る)ことが報告されてきています。
イタリアにおける143 人の患者調査では、COVID-19 から回復した後(発症から平均2カ月後)も87% の患者が何らかの症状を訴えており、特に倦怠感や呼吸苦の頻度が高かったとのことです。
その他の症状としては、関節痛、胸痛、咳、嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、痰、食欲不振、咽頭痛、めまい、筋肉痛、下痢などさまざまな症状がみられるとされています。
32% の患者で1~2つの症状があり、55%の患者で3つ以上の症状がみられています。
アメリカからの電話調査の報告では、COVID-19 と診断された270 人のうち、
175 人(65%)が検査日から中央値7 日で普段の健康状態に復帰し、
95人(35%)が検査から2~3週間経過後も「普段の健康状態に戻っていない」と回答したとのこと。
症状が遷延する頻度は年齢層によって異なり、18~34歳では26%、35~49 歳では32%、50歳以上では47%が検査後14~21日経過後も普段の健康状態に戻っていないと回答しています。
基礎疾患の有無も復帰率に影響を与えており、基礎疾患がないまたは1つの人(28%)と比べて、2つの基礎疾患(46%)、3つ以上の基礎疾患(57%)をもつ人の方が症状が持続する割合が高かったようです。
所感
さて、これを受けて「COVID-19は後遺症がめっちゃ多くて、超こわーい!」と思いますか?
私はそうは思いません。
上記のような症状が現時点ではCOVID-19によるものか分からないからです。
これだけ騒がれている疾患です。
後遺症の話も巷では広がっています。
Twitterでも味覚が戻らないと投稿される方もおられますね。
あれらが嘘とは言いません。
しかしCOVID-19が関連していると決めつけてはいけません。
私は多くは不定愁訴の可能性が高いと考えています。
仮にCOVID-19の影響だとしても、例数が少なすぎます。
不定愁訴とは雑に言うと「気のせい」です。(※雑に言うとですよ?)
気のせいで味覚障害があるわけないでしょうー!という方は、「気のせい」を甘く見過ぎです。
人間が気分に左右されないなら、治験はもっと簡単になります。
プラセボでも味覚障害がある可能性の薬と言えば、味覚障害は起こるのです。
病は気からはあながち嘘でもないのですね。
何だか関連あるかもしれない症状で、重めな症状が少しでもでると、まるでそれが普遍的事象であるように大騒ぎするのは、HPVワクチンの副反応報道のようで私としては落ち着かないです。
まとめ
さて今日は診療の手引き最新版から、COVID-19の症状、合併症、後遺症についてまとめてみました。
みなさんのコロナに対する印象は変わったでしょうか?
正しく恐れるなんて言葉が一時期流行りましたけど、恐れるにしても恐れないにしても、相手のことを知ることは大事なことだと思います。
相手を知ったうえで、冷静に対処しましょ!
※当ブログにおける見解は個人的見解であり、所属する企業の見解ではございません。また特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。