先日、アメリカで販売されておりました、エーザイの抗肥満薬ベルヴィークが販売中止と承認取り下げとなりました。
日本では出ていない薬ですね。
今日はこのベルヴィークの分類される、「抗肥満薬」について考えてみたいと思います。
要約
・日本唯一の抗肥満薬サノレックスは劇薬、向精神薬、習慣性医薬品
・作用機序は摂食中枢の抑制
・あくまで抗肥満薬でありダイエット目的は危険!
抗肥満薬ベルヴィークの開発経緯
本題に入る前に、今回の記事を書くきっかけとなったアメリカの抗肥満薬ベルヴィークの取り下げについて、簡単にまとめました。
興味ない方は読み飛ばして頂いて大丈夫です。
ベルヴィークは2012年6月に、13年ぶりの肥満症治療薬としてアメリカで承認を取得しました。
ただし承認条件として、心血管系副作用の発現頻度に関する長期投与試験が義務付けられておりました。
そのため、エーザイは約5年間の長期心血管疾患アウトカム試験を実施し、心血管イベントの上昇は認められないという結果を得ていました。
ここまではOKです。
ところが、FDAが試験データを解析したところ、がんと診断された被験者の割合がベルヴィーク群で7.7%と、プラセボ群の7.1%を上回り、リスクがベネフィットを上回ると判断されたため、今回の取り下げに至ったわけです。
試験データの詳細は見ていませんが、プラセボ群含めたがん患者の割合がかなり高いのが不思議ですね。
対象群含めてハイリスク群だったのかもしれません。
リスクがベネフィットを上回ると判断されたわけですが、これが他の系統の薬であれば、取り下げまでいかなかったのではないかと私は考えています。
アメリカでは肥満の患者が多いですが、肥満自体は緊急性のある疾患ではないため、がんのリスクが優先されたのではないでしょうか。
でもベルヴィークは日本では販売されていない薬ですので、アメリカにおける販売中止や承認取り消しはほとんど影響ありませんね。
日本で承認されている抗肥満薬サノレックス
さてここからが本題です。
では、日本で抗肥満薬は承認されているのでしょうか?
実は1剤だけ承認されている薬剤があります。
ノバルティス(旧サンド社)が開発した食欲抑制薬のサノレックス(マジンドール)です。
魔人ドールとかかっこいい名前ですよね!…ね?
ちなみにサノレックスの語源はSANDOZ(サンド社の)ANOREXITANT(食欲抑制剤)です。
単純明快で覚えやすいですね!
作用機序
ただこの薬、「劇薬、向精神薬、習慣性医薬品」に指定されています。
投与期間も3か月限度、1か月で効果がなければ中止、作用機序も摂食中枢の抑制、副作用も20%を超える等となかなか過激です。
中枢、つまり脳に作用するのです。
下剤だとか、脂肪分の吸収を防ぐとか、「カワイイものではない」のです。
断じて「ダイエットサプリ♡」というレベルではありません。
適応
適応自体も「食事療法及び運動療法の効果が不十分な高度肥満症(肥満度が+70%以上またはBMI が35 以上)における食事療法及び運動療法の補助」とかなり限定された適応となっています。
抗肥満薬はダイエットのためのものではなく、肥満症のための治療薬なのです。
サノレックスをダイエット目的で処方してくれるDr.もいるかもしれませんが、私は気軽に飲む薬ではないと思います。
いや、ほんとに魔人といっても過言ではないです。
ダイエット目的の服薬は厳禁
ダイエット目的でビグアナイド系(メトホルミン)、SGLT-2阻害薬(フォシーガ等)等の血糖降下薬や、国内未承認薬を個人輸入される方もおります。
以前、フォシーガの記事を書いたときに、ロングテールキーワードを見てみたのですが、「ダイエット」という言葉が見られました。
もしかしたらダイエット目的で服薬されている方がいるのかもしれません。
しかし医療用医薬品をダイエット目的で使用することは危険です。
そもそも医療用医薬品を個人輸入すること自体が危険な行為です。
Dr.から処方された医薬品以外の医療用医薬品を服薬してはダメです。
まとめ
今日は抗肥満薬について考えてみました。
日本人はアメリカと比べると肥満の方は多くありませんが、今後増加する可能性もあります。
でもダイエットについても薬に頼るのではなく、健康的に痩せたいですね!
薬で痩せても、生活習慣がダメだとすぐにリバウンドしちゃうかも?
私も毎日運動するようにしようっと!(2週間ぶり数百回目の決意表明)
参考
・サノレックス(医薬品インタビューフォーム:2019年3月改訂)