手軽に書けて、手軽に読める(と思われる)お薬の名前の由来シリーズ。
今日はアルツハイマー型認知症治療薬を中心に取り上げました。
あんまり面白ネタがないので、治療薬の特徴も軽くまとめておきます。
最近諸事情で投稿がままならないのですが、このシリーズは手軽にかけるので、お茶を濁す感じでよろしくお願いします!
現在のアルツハイマー型認知症(AD)治療薬の特徴
お薬の名前の由来に迫る前に、簡単に薬の特徴を整理しておきましょう。
ADに使われる薬は周辺症状に対するものも含めればたくさんありますが、疾患そのものに対しての治療薬(といっても対症療法的ですが)は4つしかありません。
作用機序としてはアセチルコリンエステラーゼの阻害、NMDA受容体の拮抗です。
エーザイのアデュカヌマブが恐らく次の治療薬になるかと推測していましたが、ちょっと厳しそうですね。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬についてはコリン仮説という仮説に基づいたお薬ですね。
脳内のアセチルコリンが認知機能に関わる神経伝達物質であるため、それを壊す酵素(アセチルコリンエステラーゼ)を阻害することで、脳内のアセチルコリンを増やそう!というシンプルな考えのお薬です。
薬剤としてはアリセプト、レミニール、イクセロン(リバスタッチ)があります。
ちなみに学生の時、アセチルコリンを打ち間違えて、「汗散るキリン」でレポートを提出したことがあります。
体育は嫌いでしたね。
大学で一番嬉しかったのが体育が選択なことでしたもの。
NMDA受容体拮抗薬については、グルタミン酸仮説という仮説に基づいています。
神経伝達物質であるグルタミン酸は、通常時では情報伝達効率を高めて記憶・学習の手助けをしているいいやつなのです。
認知症患者の脳内においては、グルタミン酸神経系の過剰な活性化が起こり、それが神経細胞を傷つけてしまっています。
だからNMDA受容体(グルタミン酸の受容体)の拮抗薬を入れて、グルタミン酸神経系の過剰な興奮を抑えることで、神経を保護しよう!という考えのお薬です。
薬剤としてはメマリーがあります。
アリセプト(ドネペジル)
アリセプトはエーザイさんの屋台骨を長らく支えてきたお薬です。
この薬のおかげでエーザイさんは名だたる製薬企業に成長することができたと言っても過言ではないでしょう!
臨床試験開始は1989年までさかのぼります。
承認されたのは1999年10月ですね。
ミレニアム目前の出来事でした。
一般名はドネペジルですね。
さて名前の由来ですが、
「Aricept の[Ari]はアルツハイマーを、[cept]は(アセチルコリン)レセプターをイメージしている」とのことです。
ちなみにアリセプトD錠のD は「Disintegration(崩壊)」の頭文字Dしています。
ODと意味合いは同じですね。
疾患と作用機序に基づいた由緒正しい感じのお名前ですね。
真面目なエーザイさんらしい。
しかし一般名のドネペジルは強そうなのに、アリセプトはちょっと可愛い系ですねー。
可愛い顔してだいぶ儲けてますからね、このお薬。
見かけによらず最強クラスなのです。
レミニール(ガランタミン)
レミニールはヤンセンのお薬ですね。
マツユキソウという植物の球根から単離された化合物なんですよ!
一般名はガランタミンですね。
名前の由来は「remind」、「remember」(記憶に関連する用語)から命名されたとのことです。
リマインド、リメンバーからは分かりにくいですが、ローマ字読みすればレミニールって分かる気がする!
いたって真面目な命名法でした。
私はレミラーマと混ざって、いまいち覚えにくかったのですが、由来を考えればすっきり覚えられますね!
レミーラ、レミニール、レミラーマ
ほら?違和感ない。
薬学生の方、ごめんなさい。
イクセロン/リバスタッチ(リバスチグミン)
イクセロンは旧サンド社、現在のノバルティスのお薬ですね。
AD初のパッチ製剤、つまり貼るお薬ということで注目されました。
これまでに説明したコリンエステラーゼ阻害薬は、服薬すると吐き気が起こる副作用がありましたが、それは血中濃度に依存するということから、経皮吸収にして、吸収を緩やかにしようというコンセプトです。
認知症の方の服薬アドヒアランスを上昇させる狙いもありますね。
一般名はリバスチグミンです。
名前の由来は・・・書いてないのですよ。
ただでさえ今回は紹介数が少ないのです。空気読んで?
インタビューフォームに載せてください。
関係者の皆様、ぜひお願いいたします。
ちなみに小野薬品からはリバスタッチの名称で販売されています。
リバスチグミン+タッチ(貼付のイメージ)から命名されたとのこと。
これはまんまですね。
オノン、ぐらいにシンプルです。
小野さんらしい。
覚えやすいし、嫌いじゃないよ!
メマリー(メマンチン)
メマリーは第一三共さんのお薬ですね。
これまでのお薬と違い、NMDA受容体の拮抗薬となっております。
名前の由来は「一般名であるメマンチンを尊重して“メマ”で始まる第一三共株式会社で保有している短い名前の中から選択した」とのこと。
ネタ帳的なのお持ちだとは知りませんでした。
ワクチンでもDS-5670(コロナゼロ)とか洒落たことやっているみたいですし、結構お茶目な会社なのかも?
ちなみに私もRPGのキャラ名や武器防具の名前リストは完備していますよ?
世界樹の迷宮(アトラス屈指の名作)とかの時に便利なのです。
あとエルミナージュ(知る人ぞ知らない)。
タクティクスオウガとかも(スナップドラゴン)。
私の門外不出の中二病リストなので、残念ながらお見せすることはできません。
でもいつか子供に引き継ぐつもりです!
みなさんもかっこいい名前リストとか、武器名、技名リストがあったら教えてください。
まとめ
今日はアルツハイマー型認知症のお薬の名前の由来に迫ってみました。
4つだけと過去最少の数になってしまいましたねー。
アデュカヌマブが出てきたら、どんなお名前になるのでしょうか?
アリセプトを考慮すると、作用機序がアミロイドβの除去(Removal)だから・・・
アミベール?
ミロータル?
アミムル?
うーんダメですねー。
誰か洒落た名前を付けてあげてください!
その前に承認されるか危ういのだけど。
でもアデュカヌマブは残念だなーほんと。
これを原資にエーザイさんには次の薬の開発を進めて欲しいし、他の会社に勇気も与えて欲しかった。
しかしサイエンスの観点ではFDAの諮問委員会の意見もごもっとも。
エーザイさんもこの結果は視野に入れていたはずなので、次なる一手を既に打っているはず。