先駆け審査指定医薬品のその後シリーズ3回目です。
今日は中外製薬とオンコリスバイオファーマが開発している、がんウイルスワクチン(OBP-301)について、見ていきましょう。
この薬、当初先駆け審査指定を受けた申請者はオンコリスバイオファーマでしたが、権利移管に伴い、現在は中外製薬が指定を受けている申請者となっています。
要約
OBP-301は中外とオンコリスが開発をしているがんウイルスワクチン。
臨床試験の患者組み入れもはじまり、今のところ開発は順調。
がんウイルスワクチンとは?
がんを予防するためのワクチンとしては、子宮頸がんの原因であるHPVの感染を予防するHPVワクチンがありますが、ここでいうがんウイルスワクチンとは、どちらかというと抗がん剤に近いイメージをしてよいかと思います。
ある種のウイルスを投与し、そのウイルスががんをやっつけるのです。
OBP-301の概要
さてそんながんウイルスワクチンを標榜するOBP-301ですが、どんな薬剤なのでしょうか。
OBP-301は腫瘍溶解性アデノウイルスになります。
アデノウイルスとは風邪の原因として有名なウイルスですね。
OBP-301は正常細胞では増殖せず、がん細胞中で特異的に増殖し、がん細胞を直接攻撃して破壊することで抗腫瘍効果を示すウイルスだと考えられています。
ウイルスというと悪者を思い浮かべますが、この子はいい子なんですね!
コロナさんも見習ってほしいところです。
あー見習わなくてもいいから、いい加減にしてほしいところです!・・・激おこだよ?
さて予定されている効能ですが「切除不能、化学療法不耐容又は抵抗性の局所進行食道癌」です。
つまりもう打つ手があまりないような状態の食道がんの患者さんが対象ということですね。
臨床試験と開発状況
これまで国内での2つの臨床試験(17例)が実施されており、高い有効性を示唆する結果(食道局所完全奏効率70.6%)が得られています。
JapicやClinical Trials governmentを調べたところ、下記のような試験が進行中ですね。
・進行性又は転移性固形がん患者を対象としたOBP-301とPembrolizumab併用療法のPI試験(2021年1月末まで)
・局所進行食道癌患者に対する放射線療法との併用によるOBP-301の有効性と安全性を検討するP2試験(2022年末まで)
→つい先日、1例目の投与が開始したとのIRが出ました。
・Phase 2 Study of Telomelysin (OBP-301) in Combination With Pembrolizumab in Esophagogastric Adenocarcinoma(2022年3月末まで)
→抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用の胃がん・胃食道接合部がんP2医師主導治験です
・Phase I Study to Evaluate the Safety and Efficacy of Telomelysin (OBP-301) in Patients With Hepatocellular Carcinoma(2021年4月末まで)
→肝細胞がんに対するP1試験です。
2019年12月にオンコリスバイオファーマは第1回マイルストンを中外から受け取っています。(5億円)
つい先日1例めの投与開始IRでストップ高もありましたね。
だからなんだというレベルのIRでしたが、ストップ高までいく辺りが、バイオの面白いところです。
案の定すぐに戻りましたね。
症例1例入れてストップ高取れるなら、私、毎月ストップ高に貢献できちゃうかも(笑)
がんの試験は試験によりますが、患者さんは様々な治療を行い、最後の頼みの綱として、治験に参加いただく形となることも多いです。
つまり同意取得は比較的容易ということです。
その分、選択除外基準は厳しいことが多いですね。
エントリーできないのは心苦しいですが、治験は「治療」ではなく「治験」なのです。。。
ともあれ現在のところ、開発は順調と考えてよいでしょう。
あくまで今のところですが。がんの試験は結果を出すのが難しいのです。
ちなみにこれまでご紹介している先駆け審査指定医薬品の一覧に、このOBP-301が載っていないことに気づいた方はおられますか?
なかなかするどいですね。
OBP-301は実は医薬品ではなく、再生医療等製品のカテゴリーになるのです。
ウイルスですからね。
ですので、これまで紹介している一覧には含まれておらず、別で指定されています。
2019年に先駆け指定された再生医療等製品はOBP-301の他は、例のSB623です!
ですので、厳密にいうと今回のタイトルは誤りですね。
まとめ
今日は中外製薬(オンコリスバイオ)のOBP-301について見てきました。
がんウイルスワクチンという新しいカテゴリーの治療法について、興味を持って頂けたでしょうか。
開発がオンコリスから、がんが得意な中外になったことで、臨床試験をより上手くやってくれるのではないかという期待もあります。
今後の進捗に期待ですね!
中外さん頑張れ!
参考
第1回
第2回