期待のCOVID-19治療薬候補レムデシビルの臨床試験結果について、昨日はギリアドの重症例のオープンラベル(非盲検)の試験結果をまとめました。
今日はNIH主導のプラセボ対照の二重盲検試験の結果をまとめたいと思います。
プレスリリースに毛が生えた程度の軽めの内容です。
こちらについては試験概要をご紹介していなかったので、併せてご紹介します。
プラセボ対照の二重盲検試験なので、実質シングルアームであったギリアドのオープンラベル試験よりかは信頼性は高いと考えてよいかと思います。
要はレムデシビルの有効性をプラセボと比較することでより明確にすることができ、二重盲検であることからDr.や患者さんのバイアス、効くだろうという思い込みを排除することができているということです。
Contents
試験課題名:Adaptive COVID-19 Treatment Trial (ACTT)
まずはClinicalTrials.govから引用した試験の概要についてご紹介します。
2020/2/21から始まった試験で、中等症~重症のCOVID-19の患者1063人(予定800人)を組み入れたレムデシビルのプラセボ対照の無作為化二重盲検試験です。
プラセボ群は1日目に200 mgのプラセボを静脈内投与し、続いて100 mgのプラセボを1日1回の維持量で、最長10日間投与します。
レムデシビル群は1日目に200 mgのレムデシビルを静脈内投与し、続いて100 mgのレムデシビルを1日1回の維持量で、最長10日間投与します。
観察期間は29日間です。
先日ご紹介したギリアドの大規模オープンラベル試験と異なり、二重盲検であることと、プラセボを対照群においていることが特徴的な試験ですね。
評価項目
主要評価項目は「回復までにかかった期間」です。
回復の定義は、「退院もしくは通常の活動レベルに戻ること」と定義づけています。
副次評価項目は28個ありますが、今回結果が明らかとなっているものは「亡くなった方の割合」です。
その他の項目にはAST,ALT,Cre,Glu,PT,WBC等の臨床検査値の推移やグレード3以上の有害事象などがあります。
詳細が知りたい方は参考のリンクから、原文をご覧ください。
選択基準
選択基準は8つありますが、ギリアド試験と比較して特別な項目はありません。
COVID-19で入院している患者、胸部X線やCTで浸潤影やラ音が確認されること、酸素吸入や機械的換気が必要であること等になります。
除外基準
除外基準は5つあります。
肝機能(AST/ALT)、腎機能(eGFR)、妊娠や授乳、転院の予定、レムデシビルに対するアレルギーになります。
結果とディスカッション
主要評価項目である「回復までの期間」は、レムデシビル投与群はプラセボ群に比べ31%短くなりました。
統計学的にも有意差が出せています。(p<0.001)。
回復期間の中央値は、レムデシビル群は11日だったのに対し、プラセボ群では15日でした。
しかし副次評価項目の一つである「亡くなった方の割合」については、レムデシビル投与群では8.0%、プラセボ投与群では11.6%と少なくはなっていましたが、統計学的に有意な差は惜しくも出せませんでした。(p = 0.059)。
あとちょっとだったのにね。
この部分をあげつらって、失敗だとかいう声もありますが、主要評価項目を達成したのに失敗だというのは詭弁です。
逆だったらまずかったですね。
プラセボ対照の二重盲検試験の主要評価項目で有意差を出すことができたので、取りあえずは合格といったところです。
先日ご紹介したギリアドのオープンラベル試験と併せて見ても、安全性に問題もないことから、承認はされると思います。
日本でも特例承認により早期に承認されることとなるかと思います。
5日投与と10日投与で有意差がなかったことからも、5日間の投与で治療可能となる可能性もあります。
私がCOVID-19に感染してしまったら、「取りあえずレムデシビルを投与してほしいと言える結果」かなと思います。
ただし惜しかったとは言え、亡くなった方の割合で有意差が出せなかった点や、回復期間の短縮についても約30%であったため、特効薬というには物足りない切れ味かと思います。
そうですねー、ドラクエ5で言うところの「まどろみの剣」ぐらいですね。
私は同時期の「奇跡の剣」あたりを期待していたのですけど。
ロマサガ2で言えば「無明剣」を期待していたのに「無無剣」ぐらいの効力だったと言ったところでしょうか。
なお七英雄ではノエルが好きです。
訳の分からない例えはおいておいて、
レムデシビルの使い方としては、作用機序や臨床試験の結果を踏まえると、発症初期の段階で投与する形がベストとなるかと思います。
リスクの高い患者についてはアクテムラ等のIL-6抗体を用いて、サイトカインストームによる重症化を予防する感じ、もしくはレムデシビルを併用していく感じになるのではないでしょうか。
TAK-888といった免疫グロブリン製剤(いわゆる血清)も開発中です。
作用機序の異なる薬剤を単独、もしくは組み合わせて、症状やリスクに応じた治療を行っていく感じかなと思います。
抗ウイルス薬としてはレムデシビルが先行していますので、アビガンがどうなるかは分かりませんね。
アビガンについても現在臨床試験を実施中ですので、そちらが良好な結果を残した場合は、承認される可能性が高いと思います。
ただしその頃にはレムデシビルによる治療が開始されている点と、以前記事にしたように、アビガンについては催奇形性の懸念が付きまといますので、どこまで広く使われるかはわかりません。
いずれにしても、COVID-19治療薬の第1弾として、レムデシビルが臨床試験にて良好な結果を残せたのは喜ばしいことですね!
5/2追記
FDAがCOVID-19に対するギリアドのレムデシビルを緊急使用承認しました!
NIH(NIAID)のACT試験(本記事)とギリアドのSIMPLE試験(昨日の記事)の結果に基づき、適応は入院中重症例(SpO2 94%以下で、酸素、人工呼吸器もしくはECMOが必要とされる場合)のみです。
中等症の試験が終われば、使える人も増えるでしょう!
取り敢えずはよかったですねー!
雑記
今日から米国株取引ができるようになりました!
「ギリアドどうしようかなー
中等症の試験結果次第でもう一回大きく動きそうですよね。
あれはきっとクリアできると思うけど、万が一外したら大変なことになるしなー。」
なんて考えているところです。
みなさんはギリアド買っていたりしますか?
参考
試験概要
Adaptive COVID-19 Treatment Trial (ACTT) – Full Text View – ClinicalTrials.gov
プレスリリース
NIHの出した本試験の結果の概要のプレスリリースです。
レムデシビルの治験関連
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