先駆け審査指定医薬品のその後シリーズ2番目です。
今日は気になっていた楽天メディカルジャパンの光免疫療法について考えてみます。
…光免疫療法、ぱっと見だと何とも怪しい雰囲気の漂う用語ですが、国の先駆け審査で指定されたものですので、変な民間医療ではないのですよ。
光免疫療法とは
光免疫療法と聞いてどんなことを思い浮かべますか?
「光を浴びせて、こう、びびっと免疫を強くする?」みたいなイメージを持たれる方が多いかと思います。しかし実態はそのようなイメージと大きく異なるものなのです。
光免疫療法は言うなれば、「ターゲッティングの技術」です。がん細胞を抗体(免疫細胞)を用いて、標的化するのです。つまり「がん細胞はここだよー!と教えてもらうための技術」なのです。
その後標的化したがん細胞をレーザー等で焼くことで治療を行います。
「理論上は」正常細胞とがん細胞の区別がつけられるため、がん細胞のみを選択的に攻撃することができるため、正常細胞に与える悪影響は少なく、副作用の少ない有用な治療方法であるということができます。
ASP-1929について
作用機序
ASP-1929はセツキシマブとIRDye®700DX の複合体になります。
セツキシマブはその語尾から分かる通り、抗体医薬品であり、抗がん剤の一種です。
IRDye®700DXはそのDyeという名称から分かる通り、ある種の染色物質ですね。
つまり「色を付けるための物質に抗体というがんに引っ掛けるフック」がついているのです。
この抗体の使い方が実にセンスがあると思いますね。
セツキシマブは頭頸部がん、食道がん、肺がん、結腸がん、すい臓がん等の様々な種類の固形がんに発現するがん抗原、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的としており、そこにくっつくことができます。くっついた後にレーザーと光ファイバーにより赤色光を浴びせると、Dyeが活性化し、がん細胞の居場所を教えてくれるようになるというわけです。
臨床試験
先駆け審査指定のされた頭頸部癌に対する臨床試験ですが、日本において第3相試験を実施中です。
JAPICのデータベースでは2021年1月までが試験の予定期間になっております。(2019年8月28日時点の情報)
なお頭頚部扁平上皮がんの患者を対象にした第2a相臨床試験における全奏効率は43%で、忍容性も良好だったと報告されています。43%は一見かなり低く見えますが、終末期のがん患者さんであったため、なかなかの成績と言えます。
他にも食道がんに対する第1/2相試験も実施しているようです。こちらは2021年11月末までですね。(2019年10月10日時点の情報)
まとめ
第3相試験の進捗や結果はまだ出ていませんので、順調かどうかは不明ですが、少なくとも頓挫はしていない模様です。頭頸部癌や食道がんで良好な成績を残せたら、他のEGFR発現のがんにも適応を広げていける可能性があります。そして理論上は抗体の種類を変えれば、つまり他のがんにもくっつくようにできれば、更なる適応の拡大も狙える可能性もあるということになります。
楽天の三木谷社長は、光免疫療法を「生物学とナノケミストリーと光工学から生まれたイノベーション」だと説明しています。確かに既存の医薬品の開発とはちょっと変わった視点での治療法の開発ですね。
このような異なる視点を取り入れて開発することができるのも、ベンチャー企業の強みなのかもしれません。
楽天さん頑張って!
雑記
最近仕事が忙しくて、記事のストックが減ってきました。
それなりに知っている内容だと1記事1~2時間で作成できるのですが、知らない内容だと、色々調べたりして10倍くらいかかることもあるので、なかなか大変です(笑)
参考
・1回目