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そんなにいじめないで!「先駆け審査指定制度」と「ゾフルーザ」(塩野義製薬:4507)

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日本の新薬承認に関する制度の一つ、先駆け審査指定制度はご存知ですか?

少し前に塩野義製薬のインフルエンザ治療薬ゾフルーザを巡って、先駆け審査指定制度が注目を浴びたことがあります。今日はそのゾフルーザと先駆け審査制度について、少し考えてみたいと思います。

 

ゾフルーザについて

まずはインフルエンザ治療薬のゾフルーザについて、簡単にまとめます。

ゾフルーザは塩野義製薬の開発した、新規作用機序のインフルエンザ治療薬で「効果が強い、1日で治療が終了する」等とマスコミにも多く取り上げられ、各医療機関においても積極的に処方されました。塩野義の売り上げにも大きく貢献し、塩野義の株価も7000円を超えるまで上昇しました。

ところが耐性ウィルスの出現が取り沙汰され、まるで悪者のように叩かれてしまいました。結局は使われすぎたことが問題だと私は考えています。不用意に使えば耐性ウィルスが出現するのは当然のことです。画期的な薬剤であることには変わりないので、マスコミさんには冷静な報道を心がけていただきたいものです。

いずれにせよ、ゾフルーザの評判は「画期的な新薬というよりは、耐性ウィルスの出現を招いたあまりよろしくない薬」のような感じになってしまっていると思います。学会でも小児への積極的な使用は勧められないと言われてしまいました。少し気の毒だと思います。今後の症例蓄積で評価を覆せることを祈っています。

 

 

先駆け審査指定制度について

さて、そんなゾフルーザですが、実は通常のルートで新薬として承認されたのではなく、国の比較的新しい制度「先駆け審査指定制度」にのっとって審査されました。この制度は「世界に先駆けて開発され、早期の治療段階で著明な有効性が見込まれる医薬品を指定し、各種支援による早期の実用化を目指す制度」です。

指定基準は下記の4つです。

  1.治療方法/診断方法の画期性

  2.対象疾患の重篤性

  3.対象疾患に係る極めて高い有効性

  4.世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思(同時申請も含む)

この制度で選ばれると、PMDAとの治験相談が2か月→1か月に短縮でき、審査期間も12か月→6か月に短縮できます。特許期間が定められている薬剤開発にとって、この期間短縮の意義は極めて大きく、先駆け指定審査に指定されることは大変価値のあることです。

ただしハードルはなかなか高く、去年(第4回)の先駆け審査指定は医薬品では5件(申請は100件以上!)、再生医療製剤2件の指定でした。

指定された再生医療製剤にはお騒がせバイオのサンバイオの開発製剤SB623(外傷性脳損傷における運動障害の改善)もあったんですよ(ちなみにもう1件はオンコリスバイオです)。

この制度で取り上げられる薬剤はある程度お墨付きを得たものということができます。失敗する可能性も当然あり得ますが、普通の薬よりも注目を浴びる可能性があるという意味では、個人投資家として着目するべきかもしれませんね。

 

まとめ

上記のゾフルーザは先駆け審査指定制度に指定され、早期に承認されました。そのためもう少し時間をかけて審査すればよかったのではないかといった意見も挙げられています。

ただここで重要なことは「先駆け審査指定制度に指定されていなければ、ゾフルーザの事例は防ぎえたのか?」ということだと思います。あたかも先駆け審査が悪かったのかのように言われていますが、私はそんなことはなかったと考えています。申請データに違いはなく、通常の審査でも問題なく通過していたものと考えられるからです。

 

この先駆け審査指定制度は画期的な薬剤をより早く日本の患者さんに届けることができる制度であり、また薬価改定に苦しむ製薬企業にとって、数少ない国による後ろ盾制度です。ゾフルーザの件をもとに上げ足を取る団体もいますが、冷静に判断すれば、製薬会社は当然として、患者さんにとっても悪い制度ではないはずです。

より効果的で安全な薬剤が少しでも早く患者さんのもとに届くことが何より重要なことだと思います。

 

ちなみに薬剤の販売開始が1日でも早くなれば、それは大変な利益を生みます。もし競合薬が販売されている、開発中であるのであればなおさらです。製薬企業を応援する投資家としても、患者になりえる一個人としても、この制度はぜひ今後も有効に、そして活発に活用されていってほしいなーと思います!