るなの株と医療ニュースメモ
株や医薬品関連ニュースに一歩踏み込みます!
医療の話題

【薬剤師解説】ビタミンB6はつわり軽減に効く?文献とガイドラインから考察【栄養】

f:id:Luna1105:20200316211735j:plain

妊娠初期のつわりは、妊婦さんのQOL(生活の質)を大きく低下させる要因です。

ほんと何とかしてほしい。。。

何とかこの症状を軽減しようと調べている方も多いかと思います。

今日は妊婦さんのつわりを軽減すると言われている、ビタミンB6について科学的なエビデンスをもとに考えていきたいと思います。

要約(ビタミンB6とつわり)

  • つわりの原因は胎盤から作り出される性ホルモンと言われている。
  • つわりは妊婦さんの50-70%に見られる。
  • ビタミンB6摂取がつわりに有効との研究報告がある
  • ビタミンB6摂取は米国では推奨度A、日本のガイドラインでは推奨度C
  • ビタミンB6は脂が少ない肉類に多く、バナナ、玄米等にも含まれる
  • ビタミンB6はサプリメントからの摂取も可能(リンクあり)

つわりの概要

つわりの原因

つわりの原因は、妊娠ホルモンであるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)であると考えられています。

hCGは発達する胎盤が作り出すホルモンで、妊娠を維持する働きをしています。

つまり、つわりは胎盤ができ始めた妊娠初期に起こり始め、つわりが起きているということは妊娠が正常に維持されていると捉えることもできますね。

ただしつわりがないからといって、正常ではないわけではありません。

症状には個人差が大きく、妊婦さんの50-70%はつわりの症状を訴えますが、逆に言えば残りの方は特に症状がないというわけです。

つわりの症状

一番の症状は吐き気や嘔吐ですね。

それに伴い食欲不振や体重減少、皮膚症状が随伴することもあります。

その他だるさや倦怠感、朝起きられないといった症状が起こることもあり、精神的にもきつくなってきます。

悪化した場合は妊娠悪阻と呼び、クリニックへの受診が必要になります。(妊婦さんの0.5%程度)

このつわりの症状を緩和させるために、様々な方法が挙げられていますが、今日はビタミンB6について取り上げます。

ビタミンB6の役割

ビタミンB6はその名の通りビタミンの一種であり、水溶性ビタミンに分類されます。

そのためよほど取りすぎない限りは尿から排出されます。

ビタミンB6は、胎児期および乳児期の脳の発達や、免疫機能にも関与している他、体内における酵素反応においても必要となる栄養素です。

ビタミンB6のつわり軽減効果に関するエビデンス

産婦人科診療ガイドライン―産科編2017

さて、つわりに対してビタミンB6が効果的というのは、いわゆる民間療法レベルの話なのでしょうか。

私はこういうサプリメント的なことが大嫌いなのですが、調べてみると日本産婦人科診療ガイドラインの2017年版に記載されているのを見つけました。

つまり、つわりに対してビタミンB6が有効というのは、産婦人科学会が一定程度認めているということです。

ただし推奨度はCです。後述します。)

つわり軽減に対するビタミンB6の投与に関する記述

本ガイドラインには「ビタミンB6の経口投与(飲み薬)がつわりの症状の緩和に有効性を示したとするRCT(ランダム化比較試験)があり、欧米では広く使用が推奨されている」と書かれています。

ビタミンB6摂取量と過量投与

ビタミンB6の投与量は妊婦体重や嘔気嘔吐の程度により調整されること、カナダでは投与上限を200mg/日としていることも記載されておりましたが、通常の食事摂取量では気にすることはありません

後述のサプリメントについても、1日摂取量を守れば問題ないと思われます。

食物からビタミンB6を取り過ぎることはほとんどありません。

しかし、高用量のビタミンB6を1年以上にわたってサプリメントから摂取すると、神経障害を引き起こすことが報告されています。

そのような症状は、サプリメントの使用を中止すれば通常は解消します。

ビタミンB6の過剰摂取によって、皮膚病変、光線過敏症等を引き起こすこともあります。

いずれにしてもサプリメントを摂取する場合は用法用量を守ることが重要ですね。

ビタミンB6投与に対するガイドラインによる推奨度

米国産婦人科学会ではビタミンB6投与を推奨レベルAとしています。

一方で日本のガイドラインでは有効性が不明瞭であるとのメタアナリシス(文献同士の比較研究)もあるため、推奨レベルがCとなっています。

推奨レベルAとは今後研究が進んでも覆ることのないと思われる事項であり、

推奨レベルCとは今後研究が進んだ場合、その推定が変わる可能性がある事項です。

つまり米国としては太鼓判を押せるけど、日本としては推奨はするけど何とも言えないぐらいの加減です。

 

ただ海外の見解やこれまでの実績を踏まえ、摂取してみても損はないのではないかと考えます。

ただし思い込みによるバイアスや交絡因子(期間経過や水分摂取等の他の要因による改善)は否定できません。

なお、同ガイドラインでは少量頻回の食事摂取、水分補給も推奨しております。

また欧米ではショウガ粉末が使用されているとのことです。

ただし有効ではないとの報告もあるとの記載もありました。

併せてご参考ください。

雪印ビーンスタークによる研究(ビタミンB6サプリ)

雪印ビーンスタークとマミーズクリニックちとせが実施した研究によると、つわりがある患者20名に「ビタミンB6を25mg」と葉酸0.4mgを5日間摂取させたところ、吐き気が70%、食欲不振が65%の割合で改善したと報告されています。

ただしこの研究は母数(N数)が20名だけですので、エビデンスレベルとしては高くありません

ガイドラインの裏付けになるかしら?程度ですね。

ビタミンB6サプリメントの例

上記で研究報告をしていた雪印の子会社と大手製薬会社のものをご紹介しておきます。

私はネイチャーメイドと他にバイエルのエレビット(葉酸配合)を飲んでました。

雪印ビーンスタークスノー ビーンスタークマム つわびー

大塚製薬ネイチャーメイドB-6

ビタミンB6を食品で摂取したい場合

赤身の魚や、ヒレ肉やささみなどの脂が少ない肉類に多く含まれています。

植物性の食品ではバナナ、パプリカ、さつまいも、玄米などにも比較的多く含まれています。

そうはいっても、つわりの時期はなかなかたくさんは食べられないですね。

私は朝は調子よかったりしたのですが、食欲は・・・人によるのかな?

一般には空腹の朝が調子が良くない方が多いそうです。

まとめ

「終わりの見えないつわり」は大変つらいです。

でも「終わりのないつわり」はありません

必ず終わりが来ます!

ビタミンB6の摂取については、一部研究では効果が立証されており、産婦人科学会のガイドラインにも推奨Cで記載されています。

ビタミンB6がつわりの軽減に一役買う可能性は、下手な民間療法に頼るより高いと言えるでしょう。

少しでもつわりを軽減する手段をお探しの方は試されてみてはいかがでしょうか。

 

妊娠中はお薬の服薬もデリケートであり、治験もなかなかおいそれとはできません。

そうはいっても、つわりは大きくQOLを損ねるものですので、つわりの原因の分析や対処方法について、研究を重ねていただきたいと思います。

そしてつわりに対する有効な薬剤というのものが将来できるといいですね!